2019年のワールドビジネスサテライトの報道傾向を分析する【WBS テレ東】
2019年にワールドビジネスサテライトで放映されたニュースの傾向を見える化し、その傾向を探っていきたいと思います。
テレビの分析には、調査会社が提供するTVメタデータを分析する方法などが代表的ですが、今回はテレビ東京のWBSのオフィシャルWEBサイトの情報を元に分析していきます。
今回参考にしたデータは、各ニュースコーナーのタイトルテロップです。テレビの実際のテロップとは若干異なりますが、映像なしでも分かるようアレンジされているので、より分かりやすくなっています。
2019年に掲載されたWBSのニュースの中で、定期コーナーである「THE行列」「トレたま」「イノベンチャーズ列伝」「白熱!ランキング」を除く、通常や特集ニュース全2,567件のデータを対象に傾向を分析していきます。
タイトルテロップを形態素解析
まずは番組のテロップデータを品詞ごとに分解するため、自然言語処理の一つである形態素解析を行います。
今回は形態素解析エンジンのjanomeを利用しPythonで解析を行っていきます。経済ニュースなので、名称や大手企業などの固有名詞はある程度事前に辞書登録してから分析します。
年間2,567件のニュースをワードクラウドで可視化
そしてこれらのデータを頻出回数別に、ワードクラウドにして視覚化します。
今回はpythonのWord Cloudライブラリを利用して、まずは全2,567件のニューステロップを品詞別に分類。ワードクラウド化してみます。
最多ワードは「日本」、「安倍総理」も57回登場
最も使われていたワードは「日本」で109回、ついで「中国」が106回、「韓国」が74回と続きました。
人物としては「安倍総理」が最多の57回で、次いで「トランプ」37回、「ゴーン」19回と続きます。
2019年、もっとも取り上げられた企業は日産
企業名のみに絞り出現回数別に(2回以上放映)ワードクラウド化したところ、企業最多は「日産」で42回、次いで「セブンイレブン」25回、「トヨタ」24回という結果となりました。
ゴーン氏の海外出国前の状況でも1位と、いかに日産のニュースが多かったかが分かります。
動詞を抽出してWBSの報道傾向を掴む
続いて品詞を動詞に絞り、ワードクラウドで出力したいと思います。
世間に「広がり」つつある兆候を扱うWBS
最も多く使われている動詞は「広がる」でした。これはWBSがマスを対象とした経済メディアであることから、世間で着々と浸透しつつあるサービスや商品、事象を取り上げている(逆に言えば、ニッチなスタートアップ情報はあまり取り上げない)ことが理解できます。
実際に昨年弊社クライアントが取材されたケースでも、テロップに「広がる」が使われました。下記が実際のニュースタイトルの一部です。
2人に1人ががんに… 広がる「治療と仕事の両立」支援
Vチューバー ビジネス活用 広がる?
欧米で大人気! 電動キックボード 日本でも広がる?
夏だ!カレーだ! 広がる「スパイスカレー」
過疎地だけじゃない! 人気広がる移動スーパー
広がるリーガルテックの最新技術 誰でも手軽に商標登録!
広がる環境債 沿線住民の資金で新型車両
広がる業績悪化 日産が「9割減益」
広がるリクナビ問題 緊急取材!個人データ販売の真相
広がる活用法 しゃべるドローンも
黄金ワードは「広がる・相次ぐ・狙い・進む・続く」
一般のニュース番組が消費者寄り(消費者にどのような影響を与えるのかに重点を置く)なのに対し、経済メディアのWBSは企業・経営者寄り(企業目線でビジネスとしてどのような市場を作れるのか)であると言われています。社会貢献へのインパクトではなく、売上や利益、市場規模などのビジネスインパクトを重視する傾向にあると言えるでしょう。
元WBSのプロデューサーである野口 雄史氏は、著作でWBSの仕事を「兆しをとらえる」と表現しています。
広報戦略としてWBSへアプローチする際はこうした、小さすぎもせず、かといってまだ大きくはなっていないという、絶妙な「兆しレベル」を掴んだ上で、取材依頼などのアプローチをしていけると理想かと思います。
テレビ番組の中でも、特にWBS制作陣の価値観や温度感、そしてなにより会議や取材のスピード感は、実際にやり取りをしたり撮影取材に同行でもしない限り、なかなか実感できないものでもあります。
元WBSディレクターの方の下記著作にも記載されていますが、WBS出身の方はなかなか外部に出ない(テレビ局からの転職は少ないそうです。一方、元新聞記者というPRパーソンは沢山いる。)ようなので、ディレクターの考え方などを掴むには、こうした書籍が役に立つかと思います。