ソーシャルデータから読み解くボヘミアンラプソディの口コミ形成とテレビ報道効果
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空前の大ヒットとなりテレビでも話題となっている「ボヘミアン・ラプソディ」ですが、これまでも様々なネットニュースで口コミデータの分析や、そのヒットの背景解説などが公開されてきました。
映画の中身や総評はプロに任せ、当ブログでは口コミ等の各種データをもとにした口コミ数の推移やテレビでの報道状況を中心に取り上げてみたいと思います。
なぜここまで流行ったのか
「ボヘミアン・ラプソディ」は何故ここまで急速にヒットしたのでしょうか。
このブログではTwitterなどのデータをもとに、下記ポイントに絞って考察したいと思います。
- YouTube「ライブエイド」動画による期待感醸成(予習効果)と観覧後の再感動ループ
- IMAXやドルビーアトモスなどデジタル技術の進展
- 3連休とフレディー・マーキュリーの命日
- 水曜日のレディースデーとかつての女性ファン層の動き
- テレビの露出効果とクローズアップ現代による「社会現象のお墨付き」
Twitterなどの口コミデータは映画公開後どう反応したか
上記グラフは国内映画公開日の2018年11月9日前後のTwitterの口コミ件数をグラフ化したものです。赤い線が「ボヘミアン・ラプソディ」というワードがつぶやかれたTwitter件数(RTを除くオーガニック発言のみ抽出、10%サンプリングデータ)で、縦グラフのピンクは休日を表しており、そこにグーグルトレンドの情報とテレビでの放映データを兼ね合わせました。
情報が多すぎて分かりにくいので、それぞれ個別に解説していきます。
週末に口コミが集中。「映画館で」「回目」というワードを抽出すると
まず「ボヘミアン・ラプソディ」というワードで発言数推移(赤線グラフ)を見たところ、公開初日の11月9日に急上昇し、以後週末にかけて毎週上昇している傾向が分かりました。
口コミ内容としては初日から絶賛する声も多く、そのライブの再現性や映像・音響などの高い評価と共に「映画館で見るべき」という声も多く見受けられました。
そこで「映画館で」というワードで発言を抜き出し(オレンジ線)、2軸グラフで傾向を目立たせてみたとこと、全体の口コミ数と同様週末にかけて発言数が増えていることが分かります。
実際にIMAXやドルビーアトモスなどの最新型の映画館が増え、クイーンの名曲を大画面でライブさながら高音質で聞けるというのは、映画を見るというより一つの体験型エンターテインメントと受け取られるケースが多かったのではないでしょうか。
3週目からは週末にかけて「 回目」というリピーターによる口コミが上昇
また3週目に入るに連れ、リピート層を想定させる「 回目」という発言ワード(ブルー線)の割合も増えていることが分かります。
水曜日のレディースデーに女性ファンが殺到?
11月28日(水)のレディースデーには平日には見られなかった「映画館で」というワードが上昇していることが分かります。この28日あたりでクイーンファン層の女性が2回目以降の来場をしているとも想定されます。
ちなみに実際に平日の女性のつぶやき比率を男性と比べてみると、月曜から火曜と木曜から金曜の口コミと比べ、水曜日の女性の口コミ比率が高いことも分かりました。
映画館へ足を運ばせたポイントは平日のYouTube!?
今回の映画の最大の見所は1985年に開催された伝説のライブ、「ライブ・エイド」の21分間にも渡る完コピと言われています。
実際にYouTubeには当時の映像をそのまま見ることができ、この動画が映画とうまくリンクして、映画館への驚異的な動員に繋がったといっても過言ではないかもしれません。
実際に検索回数を口コミ件数と合わせてみていきます。
赤い線は先程から表示されているTwitterの件数です。そこにグーグルトレンドを使いYouTube内の検索数を「ライブエイド(緑点線)」及び「ボヘミアンラプソディ(青点線)」と比較したグラフを並べてみました。
これを見ると、YouTube内で映画公開初日から映画名(ボヘミアン・ラプソディという曲名)よりも、「ライブエイド」の検索回数が急上昇していることが分かります。特に顕著なのが、休日だけでなく『平日にも検索回数が急上昇している』ことです。
YouTubeのライブ・エイド動画による予習&復習が映画館への初訪&再来場を後押しか
実際の「ライブエイド」のユーチューブ動画(最初に検索に表示されるSimon Christensen氏のアカウントをベースに計測)の再生回数は、一日100万回以上再生されており、累計再生回数1億3,000万回を超えます。
4ヶ月で800倍に伸びたライブエイドのYouTube再生回数
上記グラフは直近一ヶ月の数値なので減少しているようにも見えますが、実際2018年7月には月間再生数が6.4万件だったものが、11月には5,100万回と約800倍に増えていることが分かります。そしてこちらからも土日で再生回数が伸びていることが分かります。
テレビはどう影響したか?クローズアップ現代による「社会現象へのお墨付き」
これまでTwitterやYouTubeのデータを見てきましたが、世論形成や消費者行動に一番影響力のあるとされているテレビは「ボヘミアン・ラプソディ」をどのように放映してきたのでしょうか。ここではNHKと民報5社のテレビデータから、映画を扱った番組を抽出し、放映秒数をグラフ化(縦の緑棒グラフ)しました。
11月8日に主人公役のラミ・マレックが来日したものの、公開直後はそこまで多くのテレビには取り上げられていませんでしたが、2週目の週末にはNHKの「SONGS」で特集され、次第に朝の情報番組で特集されるようになっていきます。
4週目に入ると報道ステーションでも10分以上の特集を組んで大ヒットの理由を探り、露出秒数は過去最多となります。
そして12月6日、クローズアップ現代にて番組時間をフルに使った特集が組まれ、社会現象としてお墨付き感が醸成されていったと思われます。