
【広報×AIの新時代】Claude Codeで実現する広報DX
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はじめに:広報業務の現実
広報業務に調べ物はつき物かもしれません。
調査によると、一般的な会社員でさえ1日平均1.6時間を「調べもの」に費やしているといいます。情報収集が主要業務の広報担当者なら、その時間はさらに長くなるでしょう。
本来、広報担当者が最も価値を発揮すべきは「戦略立案」や「ステークホルダーとの関係構築」のはずです。しかし現実は、日々の業務の4割が「資料を探して整理する」という作業に奪われています。
生成AIの登場で、文章作成は確かに楽になりました。ChatGPTに質問すれば、それらしい文章を生成してくれます。しかし、それでも根本的な問題は解決していません。なぜなら、AIに入力する情報の準備、過去資料との整合性確認、複数の視点からのチェックといった「前後の作業」は依然として人間が行う必要があるからです。
そんな中、2025年5月に正式リリースされたClaude Codeは、広報業務のあり方を根本から変える可能性を秘めています。単なる文章生成ツールではなく、実際にコードを実行し、システムを操作できる「業務自動化ツール」として、広報DXの新時代を切り開こうとしているのです。
Claude Codeとは

Claude Code(クロードコード)は、Anthropic社が開発したターミナル(CLI)上で動作するAIコーディング支援ツールです。
ユーザーが自然言語で指示を出すと、AIモデルのClaudeがプロジェクト全体のコードベースを読み解き、複数ファイルにまたがる検索・編集・デバッグ・リファクタリング・テスト・Git操作など、様々な開発作業を自律的にサポートします。
現時点ではコーディングに使われることが多いようですが、文章作成にももちろん利用可能です。
Claude Codeの最大の特徴は、「指示」するだけでなく「実行」できることです。
従来のAIツール(ChatGPTやClaude Web版)では、「このようなプレスリリースを書いてください」と指示すると、文章を生成してくれます。しかし、その文章をファイルに保存したり、過去の資料と照合したり、関係者に配布したりする作業は、すべて人間(もしくはブラウザを介して)が行う必要がありました。
Claude Codeは違います。ローカル環境で動作し、実際にファイルを作成・編集し、プログラムを実行し、さらにはGit操作まで自動で行えます。つまり、「過去のプレスリリースを読み込んで、文体に合わせて調整し、メディアごとにプレスリリースを作り、指定のフォルダに保存してください」という一連の作業を、すべて自動で完了させることができるのです。
大量ドキュメントの一括処理能力
もう一つの革新的な機能が、大量のドキュメントを一括で処理する能力です。
参考資料フォルダに以下のようなファイルを入れておくだけで、Claude Codeはすべてを読み込み、文脈を理解します:
- 過去3年分のプレスリリース(数百ファイル)
- ブランドガイドライン(100ページ以上)
- 製品仕様書、技術文書
- 競合分析レポート
- メディアリスト、記者プロフィール
従来のAIツールでは、トークン制限(文字数制限)があるため、これらの資料を一度に処理することは不可能でした。
Cluade Codeではファイル制限無しで、フォルダに置いておけば全てを読み取り対象とすることができます。さらにこのファイルを読み取る行為にはトークン消費がかからないので、無駄なコストが発生することもありません。
Cladue Codeはまさに仕事を完遂する「デジタル同僚」なのです。
Pythonによるデータ分析も可能
Claude Codeはデータ分析も得意です。Pythonコードを実際に.pyファイルとして保存・実行するため、一貫性・再現性のある分析が可能です。
例えば、調査リリース向けに実施したアンケートデータも、何通りものクロス集計をあっという間に実行し、さらにそこからインサイトを発見してリリースとしてまとめるまで、全工程を一貫して実施できます。
【革新1】「作業」から「戦略的思考」への転換

広報業務の40%を占める「情報整理」が瞬時に
冒頭で述べたように、広報担当者の業務時間の40%は情報収集・整理に費やされています。新しいプレスリリースを作成する際、多くの担当者はこんな作業をしているのではないでしょうか:
過去のプレスリリースを探す(30分)
関連する製品資料を集める(20分)
ブランドガイドラインを確認する(10分)
競合の類似リリースを調査する(30分)
これらの情報を整理してまとめる(30分)
合計2時間。そして、ようやく「書き始める」準備が整います。
Claude Codeが変える情報処理
Claude Codeを使えば、この2時間が数秒に短縮されます。
参考資料フォルダに必要な資料をすべて入れておけば、以下のような指示一つで準備が完了します:
「新製品『AI-Assistant Pro』のプレスリリースを作成する準備をしてください。過去のプレスリリースの文体を分析し、製品仕様書から主要機能をまとめ、競合製品との差別化ポイントを整理してください」
Claude Codeは即座に:
100件以上の過去プレスリリースから文体パターンを抽出
製品仕様書から訴求すべき機能を選定
ブランドガイドラインに基づく表現ルールを適用
競合分析から差別化ポイントを明確化
そして、これらの情報を構造化してレポートとして出力します。
CLAUDE.mdファイルが処理の要
Claude Codeで重要となるのが、プロジェクトごとに設定するCLAUDE.mdというマークダウン形式のファイルです。
このファイルにタスク内容や指示を入れておくことで、AIに一貫した挙動を取らせることが可能です。
広報やマーケティングの課題などを詳しく入れておくことで、頼もしいAIバディとして一貫した行動を振る舞ってくれるのです。
ultrathink機能で推論させる
Claude Codeの特長の一つは、より深く考えさせる「拡張思考モード」が備わっていることです。
これは通常のClaudeではThinking機能として追加されているもので、APIではThinking Tokenを自由に設定できる一方で、Clauede Codeではプロンプトとして用意されているようです。
例えばプロンプトに「考えて」や「think」をつけることで、Claudeがより多くの計算時間を得て、より綿密に思考できるようになります。
thinking機能はReasoningと言われたり推論と言われたり正直分かりにくいですが、要は上記図のように、最初のLLMからの出力を次のLLMのinputに入れて、それを繰り返している(これを思考と呼んでいる)、という捉え方が一番分かりやすいのではと思います。
Claude Codeではプロンプトに「ultrathink」を入れることで、最も多く(長く)考えることが可能となります。
拡張思考モデルはオフィシャルでは以下のような場合に特に有効だと記載があります。
- 複雑な分析:複数のパラメータと要因を含む財務、法務、またはデータ分析高度なSTEM問題:数学、物理学、研究開発長文脈の処理:広範な入力からの情報の処理と統合制約最適化:複数の競合する要件を持つ問題詳細なデータ生成:包括的な表や構造化された情報セットの作成複雑な指示に従う:複雑なシステムプロンプトと考慮すべき多くの要因を持つチャットボット構造化された創造的タスク:詳細な計画、アウトライン、または複数の物語要素の管理を必要とする創造的な文章
広報業務でも、アイディアを出し尽くした後の精査や、校正チェックにも効果的だと思います。
生まれた時間で実現できること
Claude Codeで仕事を任せると、単なる時間短縮以上の意味を持ちます。
広報担当者は以下のような、本来の価値創造業務に集中できるようになります:
深いメディアリレーション構築:記者一人ひとりの関心事項を研究し、パーソナライズされたアプローチを展開
戦略的なコミュニケーション設計:短期的な発信だけでなく、中長期的なブランドストーリーの構築
ステークホルダーエンゲージメント:社内外の関係者との対話を通じた、より効果的なメッセージング開発
データドリブンな改善:発信後の反響分析と、次回への戦略的フィードバック
「作業者」から「戦略家」へ。これがClaude Codeがもたらす最初の革新です。
【革新2】複数のプレスリリースを自動生成&記者目線で評価
Claude Codeにはサブタスクを並列で扱う機能もついています。
このTaskツールを使えば、プレスリリース作成においても全く新しいアプローチが可能になります。
ステップ1:複数の原稿案を同時作成
まず、異なるアプローチで3~5パターンの原稿を同時に作成します。
パターンA:データと実績を全面に出した論理的アプローチ
パターンB:顧客の成功事例を中心にしたストーリー型
パターンC:社会的意義を強調した大局的アプローチ
パターンD:技術革新を詳しく解説した専門的アプローチ
ステップ2:各原稿を異なる記者視点で同時評価
次に、それぞれの原稿を4つの記者タイプの視点で同時に評価します。例えば以下のような設定などもおすすめです。
・経済記者(日経新聞ビジネス報道ユニット)の視点
数字の妥当性、市場へのインパクト
投資対効果、ビジネスモデルの革新性
業界への影響、競合との差別化
・技術記者(ITmedia)の視点
技術的正確性、イノベーションの程度
実装の現実性、スケーラビリティ
特許や知的財産の観点
・生活部記者(読売新聞)の視点
一般読者への分かりやすさ
社会的意義、生活への影響
倫理的配慮、持続可能性
・業界専門記者(専門誌)の視点
業界トレンドとの整合性
競合他社との比較優位性
業界への長期的影響
ステップ3:質問/FAQの生成
各記者視点から、想定される質問や懸念点を生成します。これにより、リリースに足りていない要素や、抽象的な箇所など、発表前に潜在的な問題点を発見できます。
ステップ4:最適な原稿の選定と統合
最後に、マネージャー役のエージェントに出来上がった文章を全て読み込ませて、最も良い原稿に絞り込みます。
並列処理の真の価値:独自視点の確保
この並列処理の最大のメリットは、各評価が他の視点に影響されることなく、純粋にその立場からの評価ができることです。
ChatGPTなどのチャット形式の直列式レビューでは、例えば法務チェックで大幅修正が入った後、マーケティング視点でのインパクトが薄れてしまうことがよくありました。
しかし、並列処理では各視点が独立して評価するため、すべての重要な観点が確実に検討されます。
【革新3】コード実行とMCPによる完全自動化
Claude Codeと共に話題となっている技術がMCP(Model Context Protocol)です。
MCPは外部ツール利用機能「Function Calling」を統一フォーマット化したもので、いうなれば生成AI向けのAPIです。
このMCPを使えば、生成AI単体ではできなかった以下のような様々なタスクが実現可能となります。
- 天気を調べる
- カレンダーに予定を追加する
- 検索トレンドを調べる
- インフルエンサーを見つける
- 部屋の電化製品をAI経由で操作する
- ahrefsをAI操作してSEOの分析をする
- Xの投稿文を自動的に作って投稿までさせる
現在ではWeb SearchやGoogle連携ツールなど各種ツールが既に最初から設定されているため、外部ツールとして使うイメージがなかなか付きにくいかもしれません。これはChatGPTだと以前「GPTs」と呼ばれていたものに近いと言えるでしょう。
広報業務で活用できるMCP連携例
ここからは実際に広報・マーケティング領域で活用するイメージを実際のサービスとともに見ていきたいと思います。
1.ahrefsをAI操作してSEO分析
SEOツールのahrefsでは既に公式のMCPサーバーを公開しています。
これを使うことで生成AIに指示するだけで、ahrefsの複雑なツールを実行し、レポーティングすることも可能になりました。
ahrefsのMCP/APIを使えるプランはかなり高価な部類に入るため、大手企業以外はなかなか使えないかもしれません。
そういうときはブラウザテストツール「Playwright」の出番です。PlaywrightをMCP経由で使えば、多少操作時間はかかりますが、ブラウザで操作するマーケティングツールはかなりのものが利用できるかと思います。
2.Xの投稿文を自動作成・投稿
Xではまだ公式MCPサーバーが出ていないようですが、MCPサーバーを自分で作れば生成AI経由でXを投稿したりすることができます。
Twilogでも下記のようなMCPサーバーが登場しています。
3.インフルエンサーリストの自動作成
外部サービスでMCP対応するサービスも続々登場しています。インフルエンサープラットフォームのAnyTagもMCPに対応しています。
生成AIと対話しながらインフルエンサーを探索するといったことが可能となります。
4.Webクリッピングツールとの連携
PRtimesが提供しているWebクリッピングツールもSlack連携を挟むことで、SlackAPIと生成AIとを連携することも可能です。MCPサーバーは公式のSlack MCP Serverの他、様々なものが公開されています。
Githubで原稿を管理する
「Github(ギットハブ)」はコードの保管・履歴管理を行うWeb上のツールです。
生成AIの登場により、非エンジニアでもプログラミングができる時代に突入しました。
生成AIに指示をしてコーディングすることは「バイブコーディング」と呼ばれており、今最もホットなワードでもあります。
バイブコーディングで誰しもがWebサービスを作れるようになる世界では、コードの堅牢性やバグやエラーをいかに解決するかが重要となります。
こうした状況下で重要なのがGithubによる履歴管理であり、この履歴管理システムをプレスリリースにも活用していこうという流れが少しずつ浸透しているようです。
実際にGMOペパボ株式会社さんは、プレスリリースの確認・修正・承認といったフローにGithubを活用しているようです。
エディターCursorの登場と原稿執筆の革新
生成AIエディターのCursor(カーソル/カーサー)の登場も広報業務に大きな影響を与えそうです。
Cursorはコードを書くための生成AI搭載エディターです。様々なAIモデルを自在に設定でき、更にコードの一部指定箇所だけを選択して修正指示をする、といった柔軟な使い方ができるのが特長の一つです。
このCursorを原稿ライティングに使うユーザーも増えてきており、ライターや記者の間でも今後さらに広がっていくことが想定されます。
こうしたエディターはGithubの確認や更新といった処理も生成AIが実行してくれるため、生成AI(コンテンツ作成)×Github(履歴管理)の組合せ効果で、業務生産性を大幅に向上することができるのです。
プレスリリースをGithubでアップロードしている事例としては、メルマガなどで有名な中島聡さんのレポジトリが参考になります。
ここでは、「AIを活用した、AI-nativeな製品やサービス」の企画として、issueとしてプレスリリースを投稿してもらう流れを取っています。
Github Actionsでスマホ1台広報業務
さらに注目すべきは、Githubに追加された Claude Code GitHub Actions という機能です。
これはGithub上で、Claude Code自体を動かせるという画期的機能で、アップロードしたデータを参照して、その画面上でClaudeとコメントのやり取りや各種処理実行などができるというものです。
Githubは通常コードをアップロードするケースが多いですが、プレスリリースをアップロードすれば、修正履歴やAIによる改善案、リサーチといったGithubで可能な履歴管理とClaude Codeで実現可能な各種タスク実行などを全て実行することが可能です。
特定サービス上でClaudeが動くのもなかなか凄いですが、Actionsという自動機能を使うことで、定期実行なども可能なため、毎朝特定のニュースをチェックしてメールを飛ばしたり、プレスリリース完成後、自動で翻訳を行ったりとあらゆるPC上の操作が可能となります。
実際の活用シナリオ:
記者会見30分前、移動中の電車内で重要な数字の誤りに気づいた場合:
スマホのGitHubアプリから:
「@claude 売上予測を150%増に修正し、関連する全ての箇所を更新してください」
自動実行される処理:
- プレスリリース本文の修正
- 関連ドキュメントの数値統一
- グラフの再生成
- 修正履歴の完全な記録
これにより、「いつでもどこからでも、スマホやタブレットから高度な修正作業が可能」という究極の機動性を実現します。
実例:月次メディアレポートの完全自動化
ある企業では、毎月のメディア露出レポート作成に丸2日かかっていました。Claude Code導入後:
自動化されたワークフロー:
- 毎月1日の朝9時に自動起動
- メディアモニタリングツールからデータ取得
- 掲載内容を分析(ポジティブ/ネガティブ/中立)
- 競合他社との露出比較
- 主要メッセージの浸透度分析
- PowerPointレポート自動生成
- 経営陣への配信準備
結果:作成時間が2日→2時間(自動実行のため実質0時間)に短縮されました。
まとめ:広報業務も「AIネイティブ」に
Claude Codeがもたらす変革は、単なる業務効率化ではありません。広報という仕事の本質を取り戻すための革新です。
これまで私たちは、情報を整理し、文書を作成し、配布するという「作業」に追われてきました。しかし、広報の本質は「組織と社会をつなぐコミュニケーション」であり、「企業価値を正しく伝える戦略立案」のはずです。
広報DXは、もはや「あったらいいな」ではなく「なければ勝てない」時代に入りました。
Claude Codeは、その変革を実現するための強力なパートナーです。
作業から解放され、戦略に集中し、真の価値を生み出す。それが、広報×AIの新時代です。
当社では生成AIを広報業務に活用する様々なサポートを実施していますので、AI導入のご相談もお気軽にお問い合わせください。