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ストーリーが埋めこまれたPRは何故上手くいくのか(後編)アナ雪と物語のセオリー

前編では、共感とミラーニューロンの関係を記載しました。
後編(この記事)ではその物語性を、どうPRに活用するかを記載してみます。

人は生きる目的を探し続ける

今や信者4億人とも言われる仏教。
その教祖である釈迦は29歳の時、人生の意味に悩み悟りを見つける旅に出ました。

画家のゴーギャンは、ルームメイトのゴッホが耳を切ったことがきっかけとなり生活が一変。
貧困・病気・娘の死などが重なり自殺を決意し、遺作とするべく傑作『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』を描き上げました。

種の保存という原始的な回答を抜きにして、人が生きる普遍的な意味合いは、どんな天才であろうと見つけることができないことは、歴史が証明しています。

しかし追求してしまう。

これがDNAの究極的なデザインであり、「物語」の始まりでもあるわけです。

昔々、あるところに物語の法則を発見。

人々を魅了してやまない「ストーリー」。
その物語の共通項を世界で初めて見出したのが、ジョーゼフ・キャンベルという人物です。

ジョーゼフキャンべル
ジョーゼフ・キャンベル(1904年~1987年)

人類に受け継がれてきた物語は、古くから「神話」と呼ばれ、人々に伝承されてきました。
神話は人々に勇気を与え、生きるパワーを与えてきました。
キャンベルはこの神話に、ある一定の法則があることを発見したのです。
その法則は歴史的大ヒットを遂げた映画『スターウォーズ』の脚本にも活用されたと言われています。

キャンベルはこの法則を「ヒーローズジャーニー(英雄の旅)」と名付けました。

映画化もされています。

そして後年、ディズニーの「美女と野獣」や「ライオン・キング」の脚本家であるクリストファー・ボグラーという人物が、このキャンベルの法則をマニュアル化し、ハリウッド映画界に持ち込みました。そして今現在、数多くのハリウッド映画にこの法則が活用されています。

日本では、評論家の大塚 英志さんが『ストーリーメーカー』などで、物語の作り方マニュアルを解説しています。

ここまでをまとめると、

  • 人々に共感され、受け入れられる物語には一定の法則がある
  • それはマニュアル化されており、比較的簡単に真似することができる
  • これを企業のPRにも活かしたほうが良い

ということです。

物語の作り方(ヒーローズ・ジャーニー)

キャンベル、ボグラー、大塚 英志、この3名の主張をまとめると、

「物語とは欠如を埋める冒険であり、出発したら欠如を埋めて帰ってくる」

という流れに要約されるかと思います。

この単純なプロセスをもじることで、「ロードオブザ・リング」や「ハリーポッター」、「千と千尋の神隠し」や「あまちゃん」といった大ヒット作のストーリーが作れてしまうというわけです。

大塚英志さんによると、村上春樹でさえこの法則を後天的に“学習し”、作品を書いていると言っています。

キャンベルが作ったヒーローズ・ジャーニーは、8個のプロセスに分かれたものと、12個に分かれたものの2種類があるようです。

■8プロセスのシナリオ

1.Calling(天命)
2.Commitment(旅の始まり)
3.Threshold(境界線)
4.Guardians(メンター)
5.Demon(悪魔)
6.Transformation(変容)
7.Complete the task(課題完了)
8.Return home(故郷へ帰る)


■12プロセスのシナリオ

第一幕 
 1.日常の世界 
 2.冒険への誘い 
 3.冒険への拒絶 
 4.賢者との出会い 
 5.第一関門突破 

第二幕 
 6.試練、仲間、敵対者 
 7.最も危険な場所への接近 
 8.最大の試練 
 9.報酬 

第三幕 
 10.帰路 
 11.復活
 12.帰還


何かしらのきっかけで平凡な日常が壊れ、主人公は冒険の旅に出ます。
関門をクリアしていくと、仲間や敵、メンターなどが現れます。
そして最終ボスを倒すと、当初喪失していたものが取り戻されます。
そして帰り道、ちょっとしたアクシデントがありつつも、最初にいた場所に戻ってこれて、、、めでたしめでたし。

多くの物語の流れがこうしたプロットに集約されるそうです。

個人的に好きな映画でもある、ネバーエンディングストーリーやグーニーズは全てこのプロットで作られていました。


この12プロセスの方を「アナと雪の女王」にも当てはめて分析してみましょう。

<第一幕> 
1.日常の世界 
 子供の頃、姉妹で遊んだ楽しい思い出
 引きこもり生活と両親の死

2.冒険への誘い 
 エルサの戴冠式
 アナとハンスの出会い(エルサにとっては妹との離別)
 エルサの魔法暴発

3.冒険への拒絶
 歌「Let it go」前半で表現

4.賢者との出会い 
 トロール、オラフの登場

5.第一関門突破
 山に登り、深い谷に氷の階段を作り”向こう側”へ渡る
 氷城を建設(ここでエルサの悩みが一部解消、王妃の象徴ティアラを喪失)

<第二幕>
6.試練、仲間、敵対者 
 アナの山登り
 オラフ、クリストフ、スヴェンの登場
 マシュマロウの出現

7.最も危険な場所への接近 
 アナの生命の危機
 ハンスの結婚詐欺と反逆

8.最大の試練 
 愛の本質確認
 アナの凍結 

9.報酬
 魔法のコントロール力
 アナの復活

<第三幕>
10.帰路 
 オラフの溶解

11.復活
 天候の復活
 王国の秩序復活

12.帰還
 アレンデール王国の復興
 アナとクリストフの恋愛開始
 (マシュマロウがエルサが喪失したティアラを取り戻す)

主人公が二人いるため少し矛盾するところもありますが、物語のストーリーとしては「城に行って、魔法のコントロール力を獲得して、帰る」という王道ストーリーをなぞっていることが分かります。

企業の物語活用方法

話がだいぶ脱線しましたが、企業が物語を活用する場合はもっと簡単に、

第一幕:商品・サービス・起業を思いついたきっかけ、何かしらの欠如

第二幕:パートナー・ライバル・メンターの出現、試練、挫折と再起、成功、報酬(反応)

第三幕:第二幕までにもたらした社会への貢献・反響、次なるストーリーの幕開け

この三幕で構成すると良いかもしれません。

スターバックスやブルーボトルコーヒー、アップルなどといった成功物語にも、こうしたストーリーPRが使われています。 

特に最近では女性起業家が両親をメンターに設定するケースが増えてきており、家族愛にも繋げることができるため、PRでも受け入れられやすいかもしれません。

個人が物語を埋め込む時代へ

最近では、STORYS.JPなどのサービスも出てきており、物語を個人が作り発信し、収益を得ることができる時代になりました。 

従来、作家や映画業界が駆使していたこうした物語技法を、これからは一人一人が個人として活用していく時代に入ったともいえるかもしれません。

その際はきっと、キャンベルの「ヒーローズ・ジャーニー」が強い味方となってくれるはずです。

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