調査PRのコツとヤフートップ掲載の狙い方
ネットニュースなどで、「□が30代の女性○名へ✕✕のアンケートを行ったところ、約△割が▽▽と感じていることが判明した。」といったような記事を一度は目にしたことがあると思います。
メディアに記事として取り上げてもらいやすいネタの一つが、この「アンケート調査結果」です。
こうした記事は主にネットニュースサイトで取り上げられる事が多く、記事露出を狙ったPR手法の一つの主流となってきています。最近ではインターネットリサーチも進化し、従来よりも安価にアンケートを実施することができるようになりました。
ヤフートップに掲載「寝るまでスマホ 7割不眠症」
このアンケート調査ですが、ネットニュースだけでなく、上手くいけば全国紙にも取り上げてもらえる可能性があり、またパブリシティの最高峰、ヤフートップに掲載してもらえるケースも少なくありません。
そこで、具体的に実際にヤフトピに上がった最近の事例から、調査PRのコツを探っていきたいと思います。
最初は味の素さんの事例です。
睡眠に関するリサーチ結果の記事掲載から、12月2日にヤフートップに掲載となりました。
まずは時系列でリサーチから掲載までを追ってみましょう。
■2015年8月:ネットリサーチ調査を実施(対象:全国の20~70代の男女1,200名)
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■11月4日~11月9日:リリース配信
https://digitalpr.jp/c/24
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■11月18日:産経新聞朝刊&WEB 記事掲載
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■12月2日AM:朝日新聞デジタルにて記事掲載
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■同時にヤフーニュースに転載
就寝直前までスマホ、7割が不眠症の疑い 専門家も警鐘 (朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース
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★12月2日PM:ヤフートップにてトピックス掲載(約2時間程?)
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■同日、朝日新聞夕刊総合面でも紙面に記事掲載
なぜ味の素が睡眠ネタなのか
ところで、何故味の素さんが睡眠に関しての調査を行っているのかという点ですが、これは、睡眠の質を高めるアミノ酸“グリシン”を配合した商品『グリナ』を販売しているので、その商品の関連PRと考えられます。
こうした睡眠に関する実態調査を行うことで、
①睡眠というテーマにおいて新たな問題点や実態を把握、見える化し
②メディア報道で広く情報を伝えるとともに、危機意識を醸成し
③商品ニーズを創造、拡大しながらブランディングに繋げる
というのが今回の狙いの一つだと考えられます。
調査結果から導かれる事実
さて、この調査結果では大きく2つの結果が浮き彫りとなったようです。
①高齢者よりも若年層に不眠症傾向がある
(特に20~30代の若年層の7割に不眠症の疑いがある)
②その要因は、生活リズム、育児・介護、スマホ
この結果を踏まえて、朝日新聞では「若者のスマホ依存が不眠につながっている」と報道。
ヤフーニュースでは、編集部により
「『寝るまでスマホ』で7割が不眠症か」と独自タイトルが付けられ報道されるに至りました。
※ヤフーニュースの作られ方はコチラを参照
【ヤフートップに載ったポイント】
①社会問題、時流、みんなゴト
今や誰しも利用するようになったスマホ。そのスマホの普及に伴い若者の不眠症が増加しており、高齢者よりも割合が高いという結果は、社会問題を取り扱う朝日新聞の記者にも刺さったのかもしれません。
「歩きスマホ」や「スマホネック」といった、“便利なスマホが抱える新たな問題”として、報道しなくてはならない社会的意義として情報発信できた結果、新聞の記事掲載に繋がったと言えるでしょう。
また、誰しも寝る前のスマホが睡眠に悪影響だと気づいているものの、実際の数字として「7割が不眠症」という数値データは、驚き要素もあり、ニュースネタとしては取り上げられやすい要素になったのではないでしょうか。
スマホをネガティブに捉えたネタでもあるので、記事や広告主が経済界メインとなる日経新聞だとそこまで刺さらなかった内容かもしれません。
②第三者コメントの活用
今回のリリース内には、専門家からの第三者コメントとして、睡眠総合ケアクリニック代々木の医師のコメントが入っています。
実際、朝日新聞や産経新聞の紙面でも、医師のコメント付きで掲載されました。
味の素さんは昔からこのように第三者有識者コメントを使うのが上手な印象がありますが、リサーチ結果はただ結果を発表するだけでなく、その考察を企業以外の第三者目線で加えると、信頼性が増し、メディアも取り上げやすくなります。
さらに識者が本を出版していると更に信頼度が上がり吉。
③「寝るまでスマホ」という造語
朝日新聞の元記事では「就寝直前までスマホ、7割が不眠症の疑い 専門家も警鐘」「スマホ依存 不眠に関係」という真面目な日本語のタイトルだったものが、ヤフー編集部により「寝るまでスマホ 7割不眠症か」というタイトルが付けられトップ掲載となりました。
こうした一言で伝わる分かりやすいキャッチーなワードを、メディア側に“思いついてもらい”記事に使ってもらう、というのは一つの手の込んだ戦略となるでしょう。
記者側は企業が押し付けたフレーズは嫌う傾向が強いので(宣伝ではなく、ニュース報道したいため)、リリースにはキャッチーな言葉をあえて使わず、メディア発のフレーズを狙う形も良いかもしれません。
次にもう一つ事例です。
日経新聞朝刊掲載「築地市場移転 知っている7割」
こちらの事例は先ほどの「寝るまでスマホ」のヤフートップ掲載の翌日、日経新聞朝刊(東京・首都圏経済面)にてリサーチ結果が記事掲載となった事例です。
こちらは情報発信元は紀文さん。ネタは2016年11月に移転予定の築地市場に関する内容です。
リリースと共に掲載までを時系列で見てみましょう。
■2015年10月23日~28日:ネットリサーチ調査(全国の男女10,000人)
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■11月30日:リリース発表
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■12月3日:スポニチアネックス掲載
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■同日:ヤフーニュースに転載
築地移転 その前に行ってみたいは5割超 (スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース
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■12月4日:日経新聞朝刊掲載
紀文が何故築地ネタなのか
現在は銀座に本社のある紀文さんですが、発祥の地は築地とのこと。
更に1月から魚河岸あげという商品のキャンペーンが予定されているとのことで、今回の築地テーマの調査PRと相俟ったようです。
こちらは調査対象人数が10,000人とかなり大規模。
1万人というと消費者動向調査やトレンド調査に使われるレベルの規模。かなりの費用もかかるはずで、味の素さんが1,200名対象だったのと比べると、調査の意気込みが感じられます。
調査では全国を9ブロックに分け、それぞれ地域別の築地移転認知度を比較。その他、商品名である「魚河岸」に関連した設問を入れているようです。
結果として認知度7割以下という数字が出たことで、『消費者への周知課題』という社会意義を持ったPRテーマを打ちたてることができたと見て取れます。
アンケート調査の対象は何名にすべきか
アンケート調査にあたり、その対象者が少なすぎると信頼度にかけ、多すぎても無駄な予算がかかってしまうということで、対象数の設定というのは調査PRの際はどの企業も悩みどころのようです。
正確なマーケティングデータとして活用するには、母集団の数を元にカイ二乗検定などを使って、誤差や信頼レベルを調べる必要があります。
しかし、メディア露出だけを目的と考えるのであれば、実際に掲載となっている他の事例を参考にして決めていければよいかと思います。
掲載例を調べてみると
そこで最近で新聞に掲載となった調査PRネタをいくつか調べてみると、、、
日経新聞
補聴器メーカーのリオン(東京都国分寺市)が全国千人を対象に今年の「心に残った音」を調査した結果、「ラグビー・ワールドカップ(W杯)での日本代表選手の歓喜の雄たけびや拍手・歓声」が1位に選ばれた。
→全国の男女1,000名
日経新聞/毎日新聞掲載
マンダムが18~39歳の女性を対象に実施したハロウィーンに関する調査によると、45・2%がイベントに参加したことがあると答え、身近なイベントとして定着しつつあることが分かった。参加者の75・3%が仮装を経験し、若年層ほど仮装を好む傾向が強かった。調査は10月9~14日にインターネットで438人に実施。マンダムの担当者は「今年のハロウィーンは例年以上に盛り上がった。参加数は年々増えている」と話した。
→18~39歳の女性 438名
日経新聞掲載
「海外で働きたいとは思わない」と考える新入社員が63・7%に達し、過去最多だったとする調査結果を産業能率大(東京)がまとめた。
前回の2013年度調査より5・4ポイント増え、調査を始めた01年度(29・2%)と比べると2倍以上になった。語学力に自信がないため海外勤務を敬遠する人が多く、若者の内向き志向が強まっている。
調査は7~8月、今年度に入社した新入社員にインターネットで実施した。831人が回答した。
→全国の新入社員1,000名
こうして見てみると対象者は500~1,000名ほどが一般的であることが分かります。
メディア自身が行っているケースではどうか
さらに分かりやすいのは、メディア自体もアンケートを実施することもあり、この対象者数を見習って設定すれば、母数が足りないと思われることもないかと思います。
日経新聞調査/日経新聞掲載
非婚化や少子化の背景にあるといわれるのが、未婚男女の「恋愛離れ」だ。恋愛しない、あるいは恋愛できないシングル女性が増えている理由とは。1000人調査と取材を通じて、働く女性の恋愛の実情を探った。
9月18~24日にインターネット調査会社のマイボイスコム(東京・千代田)を通じ、20~50代の独身、正社員(役員、経営者含む)の女性に調査。有効回答数は1000人。平均年齢35.8歳
→20~50代の独身、正社員の女性1,000名
さらに日経MJでは「1,000名の家計簿」という連載企画もあり、ここではネットリサーチを使った1,000名アンケートを元に記事がかかれています。
こうした事例から分かるように、アンケートの対象者は1,000名確保できれば事足りることが分かります。
全国紙やヤフートップを狙った調査PRのまとめ
さて、かなり長くなってしまいましたが、 要点を次の3点にまとめてみます。
①時流に沿わせながら、誰もが身近に感じる調査テーマを設定する
経済動向(マジョリティ層に影響するもの)、季節ワード、ジェンダー、世代ギャップ、健康、価値観etc
賛否両論ネタも取り上げられやすい傾向にあります。
②有識者コメントを入れる
健康問題なら医師免許保有者、著書を出していればなお吉。
お墨付き感を醸し出しましょう。
③調査対象はスクリーニング対象にもよるが500名以上が基本
予算があれば1,000名が理想。
回答の割り付けはなるべく均等に。
(※母集団の割付分布と回収データに大きな差があるようでしたら、取得サンプルにウェイトバックを施したほうが良いでしょう)
以上、ご参考にしていただけましたでしょうか。
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