
2025年7-9月期 雑誌印刷部数を分析する
2025年7-9月期の雑誌印刷部数データが公開されましたので、今回も各数値を分析してみます。
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今回の記事のまとめ
🎯 増刊号戦略の大成功:MEN'S NON-NOが増刊2号展開で+80.0%増(+40,000部)と驚異的な成長。Timelesz・僕のヒーローアカデミア効果が顕著
📊 美容誌の新トップ誕生:VoCEが付録戦略とマルチバージョン展開で美的を抜いて108,167部に。美容誌市場の勢力図が変化
⏰ ジャンプ100万部割れ秒読み:週刊少年ジャンプが1,026,667部であと26,667部に。次期(10-12月期)での100万部割れがほぼ確実に
目次[非表示]
- ・前年同期比で部数が増えた雑誌
- ・1位 MEN'S NON-NO(集英社): +80.0%増(+40,000部)
- ・2位 Casa BRUTUS(マガジンハウス): +27.5%増(+20,333部)
- ・3位 てれびくん(小学館): +42.9%増(+16,500部)
- ・4位 VoCE(講談社): +12.3%増(+11,834部)
- ・5位 Numero TOKYO(扶桑社): +25.6%増(+8,717部)
- ・前年比で部数が減った雑誌
- ・ワースト1位:週刊少年ジャンプ(集英社)| -6.5%減(-71,564部)
- ・ワースト2位:月刊コロコロコミック(小学館)| -25.2%減(-63,940部)
- ・ワースト3位:週刊現代(講談社)| -17.0%減(-49,793部)
- ・ワースト4位:Myojo(集英社)| -33.8%減(-45,667部)
- ・ワースト5位:レタスクラブ(KADOKAWA)| -23.0%減(-43,667部)
- ・カテゴリー別動向分析
- ・出版社別動向
- ・美容誌動向
- ・週刊少年ジャンプの動向
- ・ハルメクの動向
- ・まとめ
- ・
前年同期比で部数が増えた雑誌

まずは前年同期比として部数が増えた雑誌です。
1位 MEN'S NON-NO(集英社): +80.0%増(+40,000部)

印刷部数の推移:
- 2024年7月:50,000部
- 2025年7月:90,000部
- 増加数:+40,000部(業界2位の増加幅)
2025年7-9月期に対前年同期比で最も増加率が高かったのは、男性ファッション誌の「MEN'S NON-NO」でした。
この驚異的な成長の背景には以下の要因が考えられます:
僕のヒーローアカデミア増刊版の大ヒット:

- 堀越耕平描き下ろしイラストの表紙
- 豪華付録3点セット(緑谷出久&爆豪勝己アクリルスタンド、アクリルチャームトップ、ステッカー)
- アニメファン・コレクター需要の完全な取り込み
増刊号戦略の成功:
- 7月9日同時発売の2バージョン展開
- 通常版(佐藤健表紙)とヒロアカ増刊版で異なる層を狙い撃ち
- 限定版としての価値提供でコレクター需要を喚起
タイミングの妙:
- 『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE』シリーズの人気継続
- アニメ最終章への注目度上昇
- ファッション誌×アニメコラボの新機軸
2位 Casa BRUTUS(マガジンハウス): +27.5%増(+20,333部)

印刷部数の推移:
- 2024年7月:74,000部
- 2025年7月:94,333部
- 増加数:+20,333部
「Casa BRUTUS」の万博特集第2弾が要因:

2025年10月号「万博最終案内」の成功:
- 9月9日発売予定(万博閉幕1ヶ月前の最終ガイド)
- ベストパビリオンマップ、藤本壮介インタビュー
- 前号(6月号)が累計15万部・3刷の大ヒットを受けての期待値の高さ
- 書店での品切れ続出の人気
万博関連コンテンツの需要継続:
- 大阪・関西万博(2025年4月13日開幕)への関心持続
- 6月号「万博と建築」(櫻井翔表紙)の成功を受けた第2弾
- 建築・デザインという切り口の確立
ブランド力の向上:
- 万博特集シリーズ化の成功
- 建築特集の定評
- ムック本展開との相乗効果
前期(2025年4-6月期)の6月号万博特集に続き、2025年7-9月期は10月号万博最終案内で好調を維持。万博特集の継続的成功が男性ヤングアダルト誌カテゴリー全体の成長(+13.5%)を大きく牽引しています。
3位 てれびくん(小学館): +42.9%増(+16,500部)

印刷部数の推移:
- 2024年7月:38,500部
- 2025年7月:55,000部
- 増加数:+16,500部
「てれびくん」の成長要因:

9・10月号のトミカ付録が大ヒット:
- 7月25日発売の夏休みスーパー特大号
- てれびくんオリジナルトミカ 日産 NISSAN GT-R(レースブレイバー)
- トミカ55周年記念の完全オリジナル限定付録
- てれびくんでしか手に入らない希少性で購買意欲を喚起
合併号形式への移行成功:
- 2024年から年6回の合併号形式を採用
- 1冊1,980円という価格でも豪華付録で価値を提供
- その他付録(ゴジュウジャーカード、ステッカー、ペーパークラフト等)も充実
親世代(トミカファン)への訴求力:
- トミカコレクターの大人も購買層に
- 限定トミカとしてのコレクション価値
子供向け雑誌市場全体が厳しい状況の中(カテゴリー全体では減少傾向)、トミカという強力なIPとのコラボレーションで成長を実現しています。
4位 VoCE(講談社): +12.3%増(+11,834部)

印刷部数の推移:
- 2024年7月:96,333部
- 2025年7月:108,167部
- 増加数:+11,834部
「VoCE」が美的を抜いてトップに:
10月号(8月21日発売)のマルチバージョン展開:

- 通常版(浜辺美波さん表紙):KANEBO朝・夜クリーム、ONE BY KOSE新作セラムヴェール3点セット(ライスパワー®No.7配合)
- 増刊版(川村壱馬さん/THE RAMPAGE表紙):SK-II、ポール&ジョー、コスメデコルテ、ドクターシーラボの壱軍コスメBOX
11月号(9月22日発売)のマルチバージョン展開:

- 通常版(田中みな実さん表紙):ELIXIR新リンクルクリーム、エレガンス モデリングカラーベース7色全色、エスト ローション、オバジX リフトクリーム
- 増刊版(渡辺翔太さん/Snow Man表紙):キュレル フットケアマスク&クリーム、オバジX リフトクリーム(共通付録)
成功の要因:
- 高級ブランド(KANEBO、ELIXIR、SK-II等)とのコラボによる付録の質向上
- タレント・アイドル起用によるファン層の取り込み(THE RAMPAGE、Snow Man)
- 新作コスメの発売日と連動した付録戦略(ONE BY KOSE新作セラムヴェールなど)
- 通常版の豪華付録+増刊版のタレント訴求という二段構え戦略
デジタル連携の強化:YouTube20万人、Instagram50万人のSNSプレゼンス
美容誌市場での地位を着実に向上させており、長年トップだった美的(108,300部)とほぼ同水準に到達しました。
5位 Numero TOKYO(扶桑社): +25.6%増(+8,717部)
印刷部数の推移:
- 2024年7月:34,000部
- 2025年7月:42,717部
- 増加数:+8,717部
「Numero TOKYO」の成長:
- ラグジュアリーファッション市場の回復
- グローバルなコンテンツ力
- デジタルファーストの編集戦略
ニッチながら高付加価値な市場での成功事例として注目されます。
前年比で部数が減った雑誌
ワースト1位:週刊少年ジャンプ(集英社)| -6.5%減(-71,564部)

印刷部数の推移:
- 2024年7月:1,098,231部
- 2025年7月:1,026,667部
- 減少数:-71,564部(業界最大の減少幅)
- 100万部まで:あと26,667部
週刊少年ジャンプの減少が加速:
100万部割れ目前の危機的状況:
- 次期(2025年10-12月期)での100万部割れがほぼ確実
- 1995年のピーク時(653万部)の約15%まで減少
減少の主な要因:
- デジタル版への移行加速
- マンガアプリの利便性向上
- 若年層の紙離れ継続
直近8四半期の推移:
- 2023年10月:1,133,846部
- 2024年1月:1,130,000部
- 2024年4月:1,093,333部
- 2024年7月:1,098,231部
- 2024年10月:1,075,000部
- 2025年1月:1,078,333部
- 2025年4月:1,047,500部
- 2025年7月:1,026,667部
100万部という象徴的な数字の維持が困難になっており、次期の動向が注目されます。
ワースト2位:月刊コロコロコミック(小学館)| -25.2%減(-63,940部)

印刷部数の推移:
- 2024年7月:253,940部
- 2025年7月:190,000部
- 減少数:-63,940部
月刊コロコロコミックの苦境継続:
構造的な課題:
- デジタルゲームへの時間配分シフト(Nintendo Switch、スマホゲーム)
- YouTube等動画コンテンツとの競合
- 少子化によるターゲット層の絶対数減少
月刊誌の限界:
- 情報速度がデジタルメディアに劣後
- リアルタイム性の価値低下
2013-2014年の妖怪ウォッチブーム以降、減少の一途を辿っており、2025年7-9月期は過去最低水準を更新しました。
ワースト3位:週刊現代(講談社)| -17.0%減(-49,793部)

印刷部数の推移:
- 2024年7月:292,222部
- 2025年7月:242,429部
- 減少数:-49,793部
週刊誌全体の苦戦が続く中、週刊現代も大幅減少:
- 週刊誌市場の構造的課題:
- オンラインニュースの速報性
- SNSでの情報拡散
- 読者層の高齢化と自然減
ワースト4位:Myojo(集英社)| -33.8%減(-45,667部)

印刷部数の推移:
- 2024年7月:135,000部
- 2025年7月:89,333部
- 減少数:-45,667部
アイドル情報誌の苦境:
アイドル文化の変化:
- SNSでのダイレクトな情報発信が主流に
- YouTube、TikTokでの動画コンテンツ優位
- サブスク型ファンクラブの充実
ジャニーズ事務所再編の影響継続
ワースト5位:レタスクラブ(KADOKAWA)| -23.0%減(-43,667部)

印刷部数の推移:
- 2024年7月:189,667部
- 2025年7月:146,000部
- 減少数:-43,667部
生活実用情報誌の減少継続:
- デジタルへの移行:
- レシピアプリの普及
- YouTubeでの料理動画視聴
- SNSでの情報収集
カテゴリー別動向分析

成長カテゴリー
男性ヤング誌:+13.5%増(+33,217部)
唯一の明確な成長カテゴリー。
成功要因:
- MEN'S NON-NOの増刊号戦略が大きく貢献
衰退カテゴリー
少年向けコミック誌:-11.4%減(-252,271部)
最も深刻な減少を記録:
- 週刊少年ジャンプの大幅減少が直撃
- 月刊コロコロコミックも壊滅的状況
- デジタル版への完全移行が加速
その他趣味・専門誌:-14.2%減(-225,348部)
趣味の細分化とデジタルコンテンツへの移行
週刊誌:-9.8%減(-189,819部)
オンラインニュースとの競合で苦戦継続
女性ティーンズ誌:-51.2%減(-184,647部)
壊滅的な減少率:
- Myojoの大幅減が影響
- SNSでの情報収集が完全に主流化
- 紙媒体の存在意義が問われる状況
女性ヤングアダルト誌:-16.7%減(-174,425部)
ファッション誌の構造的課題が継続
出版社別動向
部数が増えた出版社 TOP 2
1位 リイド社:+1.6%増(+3,443部)
- コミック乱シリーズが堅調
2位 マルチュープルタイプス:+0.1%増(+67部)
全42社のうち、部数増加は僅か2社のみという厳しい状況が継続。
部数が減った出版社 TOP 5
1位 集英社:-11.2%減(-330,496部)
- 週刊少年ジャンプ、Myojoの大幅減が直撃
- MEN'S NON-NOの成功も全体をカバーできず
2位 小学館:-13.1%減(-313,001部)
- 月刊コロコロコミック、ビッグコミックオリジナルの減少
- てれびくんの成功も焼け石に水
3位 講談社:-9.6%減(-179,561部)
- 週刊現代の大幅減
- VoCEの好調も全体をカバーできず
4位 扶桑社:-11.8%減(-106,250部)
5位 ベネッセコーポレーション:-37.5%減(-105,887部)
- たまごクラブ、ひよこクラブ、サンキュ!の不振
美容誌動向

2025年7-9月期は美容誌市場で大きな変化が起きました。
美容誌ランキング(2025年7月)
順位 | 雑誌名 | 出版社 | 部数 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
1位 | VoCE | 講談社 | 108,167部 | +12.3% |
2位 | 美的 | 小学館 | 108,300部 | -1.5% |
3位 | MAQUIA | 集英社 | 80,000部 | -5.9% |
4位 | 美ST | 光文社 | 51,500部 | -16.4% |
5位 | SPUR | 集英社 | 41,667部 | -17.8% |
VoCE首位返り咲きの要因
マルチバージョン戦略の成功:
- 10月号:3バージョン展開(通常版、増刊版、Special Edition版)
- 11月号:2バージョン展開(通常版、増刊版)
- 各バージョンで異なる付録・表紙で購買動機を喚起
付録の質向上:
- 10月号:KANEBO、ONE BY KOSE(新作)、SK-II、ポール&ジョーなど高級ブランド
- 11月号:ELIXIR(新作リンクルクリーム)、エレガンス7色全色、オバジXなど
- 新作コスメの発売日と連動した付録戦略が奏功
タレント・アイドル起用の成功:
- 川村壱馬(THE RAMPAGE)、渡辺翔太(Snow Man)の増刊版
- ファン層の確実な取り込み
- 通常版(浜辺美波、田中みな実)との差別化
360°美容デジタルメディア戦略:
- YouTubeチャンネル20万人超
- Instagram50万人超
- 紙とデジタルの相乗効果
美的の微減要因
前期(2025年4-6月期)の大成功(SK-Ⅱ付録特集で10万部超)からの反動減の可能性があります。
週刊少年ジャンプの動向

100万部割れへのカウントダウン
現状:
- 最新部数(2025年7月):1,026,667部
- 100万部まで:あと26,667部
- 四半期あたり減少ペース:約2-3万部
予測:
- 2025年10-12月期で100万部割れの可能性:極めて高い
- 次期予測部数:100万~102万部程度
歴史的な節目
週刊少年ジャンプは日本で唯一100万部を維持している少年向けコミック誌でしたが、この象徴的な数字の維持が困難な状況です。
歴史的推移:
- 1995年:653万部(ピーク)
- 2017年:200万部割れ
- 2025年:100万部割れ(予測)
ハルメクの動向

減少傾向への転換
印刷部数の推移:
- 2024年7月:481,333部
- 2025年7月:468,333部
- 増減:-13,000部(-2.7%)
直近8四半期の推移
- 2023年10月:450,000部
- 2024年1月:488,667部(ピーク)
- 2024年4月:489,333部
- 2024年7月:481,333部
- 2024年10月:477,333部
- 2025年1月:483,667部
- 2025年4月:481,000部
- 2025年7月:468,333部
2022年10-12月期をピークに、緩やかな減少傾向が見られます。
新しい動きとしてはアンバサダーマーケティングを取り入れています。
課題
過去のブログでも触れた通り、ハルメクはCPO(1読者あたり獲得単価)が上昇傾向にあることが公開されています。新規読者獲得のコスト増加が課題となっています。
まとめ
全体的に減少傾向が続く紙の雑誌部数ですが、ここ数年の部数を延ばしている雑誌の共通点としては、表紙を複数バージョン作るパターンや漫画やイベントとの連動、付録といった共通点が見れ取れます。
これらの分析に使った雑誌の印刷部数データは以下のAIチャットからも確認できます。
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この記事は、一般社団法人日本雑誌協会が公表する印刷部数データを基に、独自の分析を加えたものです。


