
2025年1-3月期 雑誌印刷部数を分析する
2025年1-3月期の雑誌印刷部数データが公開されましたので、今回も各数値を分析してみます。
※過去データはこちらから
今回の記事のまとめ
- 📈成長市場の存在:男性ミドルエイジ誌「UOMO」が204.7%増、子供誌「小学一年生」が26.1%増と好調
- 🎁 付録戦略の成功:豪華付録や複数付録の相乗効果が購買動機に直結、ピカチュウ時計の3年連続展開で認知確立
- 🔄 プラットフォーム化:「ハルメク」「週刊少年ジャンプ」など、デジタルと融合した複合ビジネス化が進展
目次[非表示]
- ・前年比で部数が増えた雑誌
- ・1位 UOMO(集英社): 204.7%増(+65,500部)
- ・2位 小学一年生(小学館): 26.1%増(+40,800部)
- ・3位 VoCE(講談社): 16.1%増(+14,033部)
- ・4位 少年サンデー超(小学館): 222.2%増(+13,333部)
- ・5位 Hanako(マガジンハウス): 15.8%増(+9,167部)
- ・前年比で部数が減った雑誌
- ・ワースト1位:月刊コロコロコミック(小学館)| 24.2%減(-73,333部)
- ・ワースト2位:Myojo(集英社)| 38.7%減(-71,000部)
- ・ワースト3位:文藝春秋(文藝春秋)| 19.0%減(-61,333部)
- ・ワースト4位:ビッグコミックオリジナル(小学館)| 22.8%減(-52,833部)
- ・ワースト5位:週刊少年ジャンプ(集英社)| 4.6%減(-51,667部)
- ・美容誌動向
- ・ハルメク動向
前年比で部数が増えた雑誌
1位 UOMO(集英社): 204.7%増(+65,500部)
2025年1-3月期に対前年同月比で最も部数を伸ばしたのは、男性ミドルエイジ誌の「UOMO」でした。
通常こうしたグラフが現れるとバグかミスではないかと思いますが、今回は正しく2倍以上の急増となっています。
この要因はもはや雑誌部数急増の常連となっている、平野紫耀さんの影響だと思われます。
2025年4月号と2025年4月号増刊号で平野紫耀さんを起用しファン購買を狙う、もはや雑誌界の裏技とも言える王道必殺技です。
[通常版]と[増刊]で表紙と特集8ページすべての写真が異なる、創刊20周年記念号にふさわしいスペシャル・エディションです。
この現象は2023年7-9月期のELLE JAPONでも確認できており、グラフも同じような動きを示しています。
これはもはや雑誌というよりも写真集といってよいかもしれません。
こちらが増刊号ですが、表紙と特集内容以外は中身は一緒だと表紙に注意書きが書かれています。
2位 小学一年生(小学館): 26.1%増(+40,800部)
「小学一年生」の成功は以下の要因によるものです:
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革新的な付録戦略:「ピッカピカの一年生 おしゃべりピカチュウめざましどけい」は3年連続のピカチュウ時計シリーズの集大成として大きな話題となりました
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創刊100周年記念特別版:特別価格2,450円で販売された記念号は豪華な内容と付録で注目を集めました
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複数付録の相乗効果:主付録に加え、「小学一年生コミックス ドラえもん」や「ポケモンフレンダ サポートポケモンチケット」など複数の付録を同梱
- デジタルとの融合:100周年記念特設サイトや「ポケモンフレンダ」ゲームとの連携によるデジタル要素の統合
3位 VoCE(講談社): 16.1%増(+14,033部)
「VoCE」は美容誌市場で唯一増加を示している雑誌です。
- コンセプトの進化:「キレイになる」から「キレイを面白くする」へとコンセプトを進化させ、美容の楽しさや面白さを前面に出したコンテンツ戦略
- インタラクティブ要素の強化:「クロノタイプ診断」や「毛穴診断」などのインタラクティブ要素を強化し、ユーザー参加型のコンテンツを提供
- 付録戦略の継続的革新:コスメ付録の充実など、紙媒体ならではの価値提供を強化
- 強力なSNSプレゼンス:Instagram(フォロワー50万人以上)や外部プラットフォームとの連携によるリーチ力
美容誌は後ほど他誌の動きも踏まえて解説します。
4位 少年サンデー超(小学館): 222.2%増(+13,333部)
名探偵コナンをメインに扱う少年サンデーSは、4月の「隻眼の残像」映画公開に合わせた2025年1月24日発売号が伸びたようで、前年同月比222%増と2025年1-3月期で最も多い伸びを示しています。
5位 Hanako(マガジンハウス): 15.8%増(+9,167部)
減少傾向が続いていたエリア情報誌「Hanako」ですが、ここ数年で底を打ち&回復傾向にあるように見えます。
2025年5月号ではSnow Manの阿部亮平さんが表紙になったことなども影響し、前年同月比+15.8%となっています。
2022年8月号でもBE:FIRST表紙で急上昇しています。
前年比で部数が減った雑誌
続いて部数減少ランキングを見ていきます。
ワースト1位:月刊コロコロコミック(小学館)| 24.2%減(-73,333部)
最も減少したのが「月刊コロコロコミック」で、73,333部(24.2%)の減少となりました。
ワースト2位:Myojo(集英社)| 38.7%減(-71,000部)
コロナ禍において、巣ごもりや推し活でV字回復を遂げたアイドル情報誌「Myojo」ですが、ジャニーズ事務所再編の影響なども大きく影響したと思われ。前年同月比38.7%減の大幅減少が続いています。
ワースト3位:文藝春秋(文藝春秋)| 19.0%減(-61,333部)
日本を代表する総合月刊誌「文藝春秋」の苦戦は、オピニオン媒体の構造的変化を表しています。
高齢化によるコア読者の自然減少に加え、無料で質の高い論考が読めるウェブメディアの台頭が打撃となっています。「月刊誌」というタイムスパンの情報発信は、24時間更新される言論空間の中で存在感の維持に苦心しています。
ワースト4位:ビッグコミックオリジナル(小学館)| 22.8%減(-52,833部)
ビックコミックオリジナルも同じ傾きで減少が続いています。
ワースト5位:週刊少年ジャンプ(集英社)| 4.6%減(-51,667部)
毎期ごとに減少が続く「少年ジャンプ」ですが、100万部割れ目前にして底を打った動きとなっており、前年同期比では4.6%減少となりましたが、前期10-12月期からは3,000部ほど増加しています。
美容誌動向
美容誌市場では、「美的」(小学館)、「VoCE」(講談社)、「MAQUIA」(集英社)の「ビッグ3」による競争が続いています。
VoCEのみ前年同期比+成長となっており、4強のなかで1歩リードしている状況となっています。
VoCE成功の5つの要因
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「360°美容デジタルメディア」戦略
•YouTubeチャンネル登録者数20万人突破(雑誌発チャンネルとして圧倒的)
•人気シリーズ「ヘアメイク座談会」累計650万回再生
•全SNS(Instagram、Twitter、TikTok、Pinterest)での展開
•日本で2番目に大きいコスメデータベース運営 -
オンラインイベント強化
•2022年に月1回以上のペースでオンラインイベント実施
•全国の美容好きとの直接的なつながりを構築
•地方在住者や子育て中の女性も参加可能 -
VOCEアンバサダー戦略
•2022年より本格強化
•総勢269名のコスメオタク集団を組織化
•誌面、ウェブ、SNSのコンテンツ制作に参画
•2023年からクライアント企業向けサービス展開予定 -
メンズ美容への先駆的取り組み
•「VOCE Passione」メンズコスメアワード(2023年で4年目)
•メンズ美容マンガ「僕はメイクしてみることにした」単行本化(2022年)
•@cosme TOKYOでの「はじめまして美容」キャンペーン実施 -
創刊25周年の一貫したコンセプト
•1998年創刊から「キレイになるって面白い!」を継続
•2023年3月に創刊25周年
•美容誌のパイオニアとしての地位
ハルメク動向
部数TOPランクを走る女性シニア誌「ハルメク」の動向も忘れてはなりません。
2022年10-12月期をピークに、減少に転じたハルメクですが、ここ1年は安定して部数を維持しています。
ハルメクは1読者あたりの獲得単価を明記しており、貴重なデータが公開されています。
CPOは直近2年で上昇してきているようです。
以前のブログでも解説した通り、ハルメクはテレビを主としたパブリシティ戦略でうまく読者を獲得してきました。
ハルメクのテレビ露出の歴史
2019年7月「人生が変わる1分間の深イイ話」
2022年1月「プロフェッショナル 仕事の流儀」
2022年5月「日曜日の初耳学」
2023年10月「旬感LIVE とれたてっ!」
2024年1月「ガイアの夜明け」
最新のCPOは2019年の指標よりも高くなってきており、この数値をどこまで抑えられるかも雑誌の課題となっていることが伺えます。
以上、2025年1-3月期雑誌印刷部数の解説でした。
各種数値は以下ダッシュボードからもご覧いただけます。