若冲展ブームのキャズム越えはどこで起きたのか
今や平日でも3時間待ちが当たり前。
東京都美術館で現在開催されている伊藤若冲展が空前の大ブームとなっています。
実際に誰が並んでいるのか
生誕300年を節目に300分待ちもあり得る偉人、伊藤若冲。
この展示会のメインターゲットは、平日でも昼間から多くの方が並んでいることから推測するに、リタイア後の65歳以降の団塊世代夫婦、もしくは非常勤雇用や専業主婦の中高年女性友達グループといえるでしょう。
まるで土曜のオープン前の魚三酒場かのように年配層がわくわくしながら並んでおり、シニア層のディズニーランド化しています。
しかし、美術に関してはマジョリティ層がとりわけ多い気がします。つまり「若冲を見たい人」ではなく「なんか凄いものを見たい」人たちです。
彼ら彼女らは、大前研一氏もよく言うように自分をシニアだとは微塵も感じていませんし、2時間くらい炎天下で並ぶ体力も自負しており、歩くスピードも若者よりもむしろ早い。健康維持のため、あえて早歩きを心がけており、山にも定期的に行く。
彼らの多くはスマホを持っているものの、iPhoneの比率は低くドコモのアンドロイド端末を保有しているケースが多く、未だに”なんとなく”ソフトバンクを信用していないような方々だったりもするようです。
世代間の傾向をまとめた「世代論の教科書」でも解説されているように、この世代は第一次テレビっ子とも言われ、テレビとの親和性が非常に高い(テレビが効く)のが特徴らしいです。
日本初! たった1冊で誰とでもうまく付き合える世代論の教科書―「団塊世代」から「さとり世代」まで一気にわかる
同書には、この世代の特徴として「新しいもの好き」、「みんなが価値を認めるものが好き」、「みんなのマネをする」、さらに夫婦共に消費できる「エスコート消費」をするなども特徴も書かれています。
夫婦共に300年に一度の美を鑑賞するというのは、まさしくエスコート消費とも言えるでしょう。
NHKスペシャルが起爆剤!?
このブームはどこから火がついたのでしょうか。
実際の検索キーワード数と来場者数をグラフ化してみました。
来場者数の実数は不明のため、公式Twitter発表によるその日の最大待ち時間を指標としています。
まず、展示スタート4月22日の翌々日、NHKで特番が組まれます(NHKは主催者)。
その結果、検索ワードが約4倍に膨れ上がります。しかし、その翌日4月25日は美術館の休館日であり、結果「焦らし戦略」ともいえる結果となり、翌26日の待ち時間は1.6倍に増加しました。
美の巨人たちが後押し
その後、ゴールデンウィーク中の4月30日、テレビ東京の「美の巨人たち」で取り上げられた結果、5月2日には初の待ち時間100分を超え、同時に10営業日にして、来場者数10万人を突破しました。
そしてGW終盤、「美の巨人たち」で2回目の連載放映がされました。
その後、またしても休館日を経て、作品の入れ替えを行ったところ、5月11日には200分待ちまで行列が増えました。
「NHKスペシャル」でマジョリティー層への認知度を一気に上げ、「美の巨人たち」で実際の来館行動を促した、といえるのではないでしょうか。
若冲ブームのまとめ
- 300年に一度、31日しかないという希少性
- 団塊世代の右ならえ気質とエスコート消費
- NHKなどマスメディアによる認知拡大とお墨付き感
- 休館日による焦らし効果
- 混雑しているという社会的証明
- 「一旦並んだからには」というコミットメントと一貫性
などが要素として挙げられるのではないでしょうか。
どこまで伸びる、若冲展
5月18日(水)はシルバーデーにつき、65歳以上は入館料無料となります。
何人が並ぶことになるのでしょか。
また20日には「ぶらぶら美術・博物館」での特集も予定されており、全31営業日で50万人は超えるかもしれません。
それでも行くぞという方は、平日朝一で並んで入るのが一番オススメだと思います。8時くらいから並べば、徐々に進みながら10時あたりには入館できるのではないでしょうか。
熱中症にはくれぐれもお気をつけください。