生成AIでプレスリリースを作成するポイント
ChatGPTに引き続きClaude3などの生成AIが登場し、仕事に使えるレベルの生成AIが一通り出揃った感もあります。
業務効率をアップさせるためにも、プレスリリースやプレゼン資料などのテキストのアウトプットをいかにAIに実行させるかが、今後の鍵と言っても過言ではないでしょう。
この記事では、生成AIを使って読みやすく質の高いプレスリリースを作成するためのポイントを紹介します。
目次[非表示]
良いプレスリリースに必要な要素とは
プレスリリースを作成する上で、「情報の充実度」と「読みやすさ」が重要なポイントとなります。
以前の記事でも記載しましたが、情報の充実度を高めるには、「6W5H」(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)を意識することが効果的です。
- Who(誰が)
- What(何を)
- Whom(誰に)
- When(いつ)
- Where(どこで)
Why(なぜ)
- How(どうやって)
- How much(量/金額)
- How many(数)
- How long(期間)
- How in the future(未来/計画)
生成AIで文章を生成する際には、文章の出力指示をする前にこうしたポイントをしっかりとまとめることが重要となります。
AIは「良い文章」を理解しているか?
良い文章に関する書籍は毎年山のように出版されており、ビジネス誌の特集にも定期的に組まれるテーマでもあります。
しかし、しっかりと理論立てて書かれている書籍は意外にも少ないものです。
理論立てて書かれた数少ない名著の一つが、元朝日新聞記者でありジャーナリストの本多勝一氏の書籍「日本語の作文技術」です。
この1冊のノウハウさえ習得できれば、読みやすい文章をいつでも書き上げることができるといっても過言ではないでしょう。
生成AIがこうした書籍の内容まで学習していれば、いわゆる「読みやすい文章」を(ベクトルで)理解しているということになります。
書籍「日本語の作文技術」の学習状況
各種生成AIは、本多勝一氏本人および「日本語の作文技術」を知っているのでしょうか。
代表的な5つの生成AIに、実際に聞いてみます。
入力:日本語の作文技術という書籍を知っているか?
まず一番知名度の高いGPT4から順に出力してみましょう。
GPT4の出力
「日本語の作文技術」というタイトルの本については、特定の書籍を指し示しているものが見当たりませんが、これは日本語での文章作成や作文スキルを指導するための一般的なテーマかもしれません。日本語での作文技術を扱う書籍はいくつかありますが、もし特定の著者や出版年など、もう少し具体的な情報があれば、特定の書籍について詳しくお調べすることができます。あるいは、日本語の作文技術を向上させるための一般的なアドバイスや推薦される資料をお求めであれば、それについてもお手伝いできます。どのような情報をお探しですか?
前提知識はないようです。
続いてCommand R+とLhama3の回答です。
Command R+の出力
はい、私は『日本語の作文技術』という書籍を知っております。この本は、日本語の文章力を向上させるためのガイドブックとして人気のある本です。
『日本語の作文技術』は、山本秀樹氏によって執筆され、2001年に筑摩書房から出版されました。この本は、日本語の文章を書くための技術やコツをわかりやすく解説しており、多くの読者から支持されています。
この本では、文章を書く上での基本的なルールや、文章を明確かつ論理的に構成する方法、表現力を豊かにするテクニックなど、さまざまなトピックがカバーされています。また、例文や練習問題も多く含まれており、読者が実際に文章を書く練習をしながら、作文技術を向上させることができるようになっています。
『日本語の作文技術』は、学生やビジネスパーソンだけでなく、作家やジャーナリストなど、プロの書き手からも愛読されており、日本語の作文技術を向上させるための定番のテキストとして広く知られています。
Lhama3-70Bの出力
はい、知っています。「日本語の作文技術」という書籍は、国語教育の専門家である岡本茂先生が著した本です。岡本茂先生は、国語教育の分野で多くの業績を残しており、この書籍は彼の代表的な著作のひとつです。
この書籍では、作文の基本的な技術から、文章の構成、文体、表現技巧など、広範囲にわたる作文の指導を行っています。多くの学校で使用されており、日本語の教育において非常に重要な位置づけられています。
ハルシネーション的な回答となってしまいました。
続いてGoogleのGemini1.5 Proの回答です。
Gemini 1.5 Proの出力
申し訳ありませんが、私の知識は2023年11月までの情報に限定されていますので、「日本語の作文技術」という書籍に関する情報は持ち合わせておりません。
しかし、以下の方法で情報を取得できるかもしれません。
インターネット検索: Googleなどの検索エンジンで書籍名を検索すると、出版社や販売店の情報、レビューなどが見つかる可能性があります。
図書館: 図書館の蔵書検索システムを利用すれば、書籍の有無や所在を確認できます。
書店: 大型書店であれば、店員に問い合わせて書籍の情報を教えてもらえるかもしれません。
書籍のタイトルや著者名など、詳細な情報があれば、より的確な情報を提供できるかもしれません。
こちらも知識として持っていないようです。
最後にClaude3 Opusの回答です。
Claude3 Opusの出力:
はい、『日本語の作文技術』という書籍については知っています。
この本は、1981年に朝日新聞社から出版され、本多勝一によって書かれました。サブタイトルは「私の文章教室」となっています。
本書の主な内容と特徴は以下の通りです。
本多勝一自身の文章技術や経験に基づいた、実践的な文章の書き方指南書です。
文章を書く上での心構えから、具体的な文章技法、推敲の方法まで、幅広いテーマを扱っています。
文章の基本となる「単語」「文」「段落」の書き方について、詳しく解説しています。
文章を魅力的にするための技術、例えば比喩の使い方や、リズムの作り方なども紹介しています。
本多自身の文章を例示しながら、その特徴や効果を分析しています。
読者に向けた練習問題も用意され、実践を通じて文章力を高められる構成になっています。
本書は、ジャーナリストを目指す人だけでなく、文章を書くすべての人に有益な指南書として、長年にわたって読み継がれてきました。明快で論理的な文章を書くための本多勝一の考え方は、現在でも文章術の基本として高く評価されています。
Claude3だけが書籍の内容まで、詳しく知っていることが分かりました。
Claude3が読みやすい文章をかけるのも、こうした日本語の学習データが幅広いからかもしれません。
"本多勝一プロンプト"で校正させる
Claude3の文章力を試すため、実際に「日本語の作文技術」で紹介されている悪文の例をClaude3に見せて、改善させてみます。
入力:この文章を句構造文法をもとに、本多勝一著「日本語の作文技術」のテクニックで誰でも読みやすく修正してほしい
2日未明、東京都渋谷区のマンションで、部屋に充満していたプロパンガスが爆発して4人が重傷、32人が飛び散ったガラスの破片などで約1週間の怪我をした。(朝日新聞)
Claude3の出力
承知しました。本多勝一の『日本語の作文技術』で提唱されている原則を適用し、この文章を読みやすく修正してみます。
【修正版】 2日未明、東京都渋谷区のマンションでプロパンガス爆発事故が発生した。爆発は、部屋に充満していたプロパンガスに引火したことで起きた。この事故で4人が重傷を負った。さらに、爆発の衝撃で飛び散ったガラスの破片などにより、32人が怪我を負った。怪我を負った人の中には、約1週間の治療を要する人もいる。
【解説】 本多勝一の技法を適用し、以下の点を改善しました。
一文に盛り込む情報量を減らし、文を分割しました。これにより、一文の長さが短くなり、読みやすくなります。主語と述語の関係を明確にしました。「プロパンガス爆発事故が発生した」「爆発は […] 起きた」など、主語と述語を近づけ、文の構造をシンプルにしました。
情報の優先順位を調整しました。最も重要な情報(爆発事故の発生)を文章の冒頭に置き、次に重要な情報(重傷者の存在)を続けました。これにより、読者が必要な情報を速やかに得られるようになります。
因果関係を明示しました。「爆発の衝撃で飛び散ったガラスの破片などにより」と書くことで、怪我の原因が爆発であることを明確にしました。文末の情報を分離しました。「怪我を負った人の中には、約1週間の治療を要する人もいる」という補足情報は、別の文で述べることで、主要な情報がぼやけないようにしました。
このように、本多勝一の提唱する「文の分割」「主語と述語の関係の明確化」「情報の優先順位の調整」などの技法を適用することで、複雑な句構造を持つ文章を、より読みやすい文章に改善することができます。
このように主語と述語の関係性や位置などを、重要項目としてしっかりと捉えていることが分かります。
怪我の原因の因果関係に関しては、書籍でも指摘されている内容で、本文全て学習しているのではと勘ぐってしまうほどの結果となりました。
このように本多勝一氏の技法を理解しているClaude3は、プロンプトにもそのまま使えてしまいます。
最近では、旬構造プロンプトというキーワードも話題になっているようです。
句構造とは、簡単にいうと主語・述語などの構造を指すもので、難しくいうとチョムスキーが第一人者である”生成文法”領域の一つである、ということです。
6W5Hを意識したプレスリリースを作らせる
以下は実験のためAIに出力させたダミーデータです。
- Who(誰が): ABCテクノロジー株式会社
- What(何を): 革新的なスマートウォッチ「SmartWatch X」
- Why(理由): 健康管理とライフスタイルの向上をサポートするため
- Whom(対象者): 20代から40代のテクノロジー愛好者および健康意識の高い人々
- When(時期): 2024年8月1日発売予定
- Where(販路/場所): 全国の家電量販店、ABCテクノロジーのオンラインストア
- How(どうやって): 高度なセンサー技術と専用アプリケーションを利用して、心拍数、睡眠パターン、運動量などを追跡
- How much(量/金額): 希望小売価格は39,800円(税込)
- How many(数): 初回生産分は10万台を予定
- How long(長さ): 充電式バッテリーで最大7日間の連続使用が可能
- How in the future(未来/今後の計画): 将来的にはより多様な健康管理機能を追加し、パーソナライズされたヘルスケアソリューションを提供予定
この6W5Hを使って、Claude3にプレスリリースを作成させるとどうなるでしょうか。
入力:以下の情報を元にプレスリリースを出力せよ(内容略)
2024年4月28日 報道関係者各位
革新的なスマートウォッチ「SmartWatch X」を2024年8月1日に発売
~ 健康管理とライフスタイルの向上をサポート ~
ABCテクノロジー株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:山田花子)は、革新的なスマートウォッチ「SmartWatch X」を2024年8月1日に発売することを発表いたします。
「SmartWatch X」は、高度なセンサー技術と専用アプリケーションを利用して、心拍数、睡眠パターン、運動量などを追跡し、健康管理とライフスタイルの向上をサポートします。当社は、20代から40代のテクノロジー愛好者および健康意識の高い人々をターゲットに、このスマートウォッチを開発しました。
主な特長:
高精度のセンサーによる心拍数、睡眠パターン、運動量の追跡
直感的に操作できる専用アプリケーションとの連携
最大7日間の連続使用が可能な充電式バッテリー
スタイリッシュで快適な装着感
「SmartWatch X」の希望小売価格は39,800円(税込)で、初回生産分は10万台を予定しています。全国の家電量販店とABCテクノロジーのオンラインストアにて販売いたします。
当社は、将来的にはより多様な健康管理機能を追加し、パーソナライズされたヘルスケアソリューションを提供することを目指しています。
「SmartWatch X」の発売を通じて、より多くの人々が健康的で充実したライフスタイルを送れるようサポートしてまいります。
以上
このようにClaude3で6W5Hが揃っていると、読みやすい文章も一発で出力してもらえます。
これがGPT4だと、ちょっと残念な感じになってしまいます。
ABCテクノロジー株式会社、新型スマートウォッチ「SmartWatch X」を発表
— 健康管理とライフスタイル向上をサポート
東京, 2024年4月25日 — ABCテクノロジー株式会社は、健康意識の高いテクノロジー愛好者向けに開発された最新のスマートウォッチ「SmartWatch X」を2024年8月1日に発売することを発表しました。この新製品は、最新のセンサー技術と専用アプリケーションを利用して心拍数、睡眠パターン、そして運動量などの健康関連データをリアルタイムで追跡し、ユーザーの健康管理とライフスタイルの向上をサポートします。
革新的な機能とパーソナライズ
SmartWatch Xは、20代から40代の健康に関心が高いテクノロジー愛好者を対象としており、そのデザインと機能性はこの市場に最適化されています。充電式バッテリーは最大7日間の使用が可能で、忙しい日常生活の中でも利用者を支えます。希望小売価格は39,800円(税込)で、全国の家電量販店およびABCテクノロジーのオンラインストアで購入可能です。将来への展望
ABCテクノロジーは、将来的にSmartWatch Xにさらに多様な健康管理機能を追加する計画を持っています。これにより、製品はさらにパーソナライズされたヘルスケアソリューションを提供することが可能となり、ユーザーの健康維持をより効果的にサポートします。
初回生産分は10万台を予定しており、ABCテクノロジーはこの新型スマートウォッチが日本国内外での健康意識向上に貢献することを期待しています。会社情報
ABCテクノロジー株式会社は、革新的なデジタルデバイスの開発と販売において業界をリードする企業です。当社は、技術を通じて人々の生活の質を高めることにコミットメントしています。お問い合わせ
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おそらくGPTは日本のプレスリリースをあまり学習しておらず、海外や外資系のリリースをメインに学習した結果、このような本文の出だしになりやすいのではないでしょうか。
文章も1文が長く、箇条書きもあまり使わない内容となっています。
このように2024年4月の現時点では、主な生成AIモデルの中でClaude3(Opus)が最も読みやすく分かりやすい日本語を出力できるのではないかと思います。
【まとめ】プレスリリースは6W5Hを元にClaude3 opusに作らせるのが良い
以上まとめると、情報の充実度と読みやすさを兼ね備えた良質なリリース作成のポイントは、6W5HをまとめClaude3 Opusに書いてもらう、というのが今回の結論です。
近年、GPT-4をはじめとする大規模言語モデル(LLM)の精度が飛躍的に向上しています。これらのLLMを適切に活用することで、プレスリリースの作成をはじめ、様々なビジネス文書の品質を大幅に向上させることができます。
今回紹介したClaude3のように、日本語の文章力に優れたLLMを選択し、6W5Hを意識した情報の整理と組み合わせることで、より効果的で読みやすいプレスリリースを作成することが可能です。
なお生成AIを使う際は、事実確認の徹底、個人情報の管理、著作権の尊重、偏見への留意など、倫理的な配慮も忘れずに行ってください。
マルチモーダルなど、LLMの性能は更に向上していくことが予想されます。常に最新の情報を収集し、適切なLLMを選択・活用することで、ビジネスの成功に繋げていきましょう。