【Dify活用】生成AIで広報リサーチ業務を行う方法
Difyは、プログラミングの知識がなくても質問応答システムやデータ分析ツールなどのAIアプリケーションを開発できる、ノーコード型のプラットフォームです。
本記事では、そのDifyを活用して、広報リサーチ業務を効率化する方法について解説します。
目次[非表示]
広報やPRに関するリサーチ業務の手法として、従来はGoogleニュースや日経テレコン等で、ニュースをキーワード検索するようなケースが多かったと思います。
しかし、ニュースを一つ一つ探して読み込むのは非常に手間であり、そのニュースから共通テーマやPRアングルを抽出するのは、非常に属人的な作業となっていたかと思います。
生成AI登場以後は、こうしたリサーチ業務はAIに任せてしまうのが賢明かもしれません。
当ブログで以前、Open AIのGPTsを活用したトレンド情報取得Bot「トレンドナビ」をご紹介しました。
しかしGPTsは未だ動作が不安定であったり、レスポンスデータが大きいとエラーになりやすかったり(Response too large error)、外部ツール(Function)が10個までしか設定できなかったりと、色々とかゆいところに手が届かないのが残念なポイントです。
そうした中、GPTsに変わるLLMノーコードツールとして、今注目されているのがDifyです。
ノーコードLLM作成ツール「Dify」とは
Difyは、オープンソースのLLM(大規模言語モデル)アプリケーション開発プラットフォームです。
直感的なインターフェースと豊富な機能を提供し、AIアプリケーションの開発を迅速かつ容易にします。
生成AIで肝心とされるRAG(Retrieval-Augmented Generation)エンジンを搭載しているため、独自のドキュメンテーションをもとにチャットボットなどをノーコードで開発できます。日本国内の検索トレンドもGPTsを抜いています。
ちなみにDifyの名前の由来は、Define(定義)+Modify(修正) からきているそうです。
今回はこのDifyを使い、ニュースのリサーチ業務を行う方法を解説してみたいと思います。
AIを活用した効果的なニュースリサーチ手法は大きく2種類
①Perplexityを活用する方法
王道はPerplexityを使う方法です。Perplexity AIは、自然言語処理技術を活用した対話型の検索エンジンで、2022年12月に元Google AIなどで活動していた研究者チームによって開発・公開されました。インターネット上の情報を収集・分析し、ユーザーの質問に対して適切な回答を提供します。
Perplexity AIには、質問への回答、トピックの深掘り、ライブラリの整理、データとのインタラクションなど、様々な機能があります。 特に注目すべきは、ソースを明示した上で適切な回答を提供する点や、要約機能により情報を素早く把握できる点です。
Perplexityは、LLMモデルそのものではなく、検索エンジンのような立ち位置です。独自の検索結果をもとに、外部LLM(gpt4-oやClaude3など)を使いテキストを出力しています。
このPerplexityを使えば、大抵のブラウザで取得できるニュースの取得はできてしまうかと思います。
例:https://www.perplexity.ai/search/2fVQMB6VTfKjBb_BZqb8vQ
有料のProモードを使えば、更に深い情報探索が可能となります。
②GPTsやDifyなどのAIアプリを使用する方法
そして第二の方法が、今回紹介するDifyを使ったニュース収集方法です。
同じ挙動を安定して出すには、こうしたAIアプリをデプロイするのが良いかもしれません。
なおOpen AIのGPTsでもニュース検索特化GPTsを作れると思いますが、GPTsは開発やアップデートもDifyに比べると遅く、挙動も制御し辛いということもあり (パラメーター設定不可)、Dify登場後は断然Difyがおすすめです。
特にDifyはRAG(Retrieval-Augmented Generation )と呼ばれる外部知識(専門知識)の活用に最大の強みを持っています(GPTsはRAGの詳細設定は不可)。
RAGについて
RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、生成AIの回答精度と信頼性を向上させる注目の技術です。
外部データベースから関連情報を検索し、AIの回答生成としてカンニング的役割をさせることで、より正確で信頼性の高い結果を得ることができます。
RAGは、質問応答や文章生成において3つの主要なステップで動作します。
- 事前情報を細切れ(チャンク)にしてそれぞれベクトル化(数値に変換)
- ユーザーからの質問もベクトル化して、類似している事前情報を探す
- 探し出した結果をLLMにカンニングさせて回答させる
RAG(検索拡張生成)は、質問応答や文章生成において3つの主要なステップで動作します。まず、ユーザーの質問をベクトル表現に変換し、次に外部データベースから関連情報を検索・抽出します。最後に、抽出した情報を言語モデルに入力して、文脈に即した自然な応答を生成します
Difyならこうした複雑な一連の流れも、ノーコードで簡単にできてしまいます。
特に自社の広報コンサルボットとして、競合の情報や業界課題、専門知識などを持たせた上で、ニュースや情報を探してPRアングルを提案させるといった場合、Perplexityよりもより強力なアシスタントにできるかと思います。
AIに何を調べさせるべきか
PerplexityやDifyなどのAIツールで広報・PR関連の情報を探す際、具体的にどのような情報を探すのが効果的でしょうか。
主要な材料としては、下記主要な3つの情報が挙げられるかと思います。
- ニュース記事(新聞/雑誌/テレビ/WEB)
- 検索データ(Googleトレンド/DS.INSIGHT)
- SNS(X/Instagram)
ニュースだけではユーザーの動きが分からないため、検索行動とSNS投稿データなどを合わせて取得できると理想的かと思います。
初手調査を日経、WBS、NHK、AbemaNewsで実行
Difyなどは様々な外部ツールと連携し情報を取得することが可能です。例えばGoogleのトレンドや検索結果を取得できるSerpApiやyoutubeAPI、画像出力のStable DiffusionやスクレイピングツールのFirecrawlなど様々なツールとの連携が可能な他、自分でカスタマイズして作成したAPIツールと連携することも可能です。
ニュース調査を行う場合、
- 経済ネタとしての鉄板「日経新聞」「WBS」
- 世の中ごと/お茶の間ネタとしての「NHK」
- ネットトレンド✕映像の「AbemaNews(アベプラ)」
などを初手の分析対象にするのが良いのではないでしょうか。
これらのメディアはほぼ日刊であり更新性も高いのがポイントで、特に最近ではネットのトレンドを取り入れ、いち早く特集として活用するABEMA Primeも要チェックです。
Difyでリサーチ業務を自動化する
実際にDifyのワークフロー機能を使って、こうしたニュースサイト巡回システムを作ってみます。
Difyには現在、アプリの形態として、
- 会話形式の「チャットボット」
- 外部関数を使える「エージェント」
- ユーザーが処理フローを設定する「ワークフロー」
の3種から選ぶことができます。
今回は、特定のニュースサイトのリサーチ業務となるので、フローを最初から決め打ちで実行する「ワークフロー」を選択します。
流れは以下となります。
- 調べたいキーワード入力(input)
- サイト巡回(HTTPリクエスト)
- データ抽出(LLM)
- 結果を考察(LLM)
- 出力
クローリングはHTTPリクエストというブロックを利用し、各サイトでキーワード検索をして戻ってきたデータを取得する流れとしています。
※動的にURLが変わるテレ東は事前にURL取得ノードを追加し、日経は別途カスタムフローでまとめています。カスタムフローは一連の動きを関数でまとめたようなもので、APIへのアクセスを組み込んだり、フローチャートが膨大にふくれてしまうのも防ぐことができます。カスタムフローはYAML形式で作成することができます。
LLMはスピード重視でデータ抽出にClaude 3 Haikuを、結果からの考察に直近で話題の最新モデルClaude 3.5 sonnetを設定しています。
ちなみにLLMはモデルでスピードも大きく変わる結果となり、Gemini1.5Flashで26.2秒だったものが、haikuだと11.6秒で実行が完了しました。
キーワード「育休」を調査
サンプルとして「育休」というキーワードで調査した結果が以下です。
育休というキーワードで日経新聞、テレ東(WBS)、NHK、アベマニュースをお調べしました。
共通事項:
- 男性の育休取得の増加
- 共通テーマ: 男性の育休取得率の上昇とその課題
- ソース:
- テレ東(WBS): 「男性の育休 過去最高17%超 2025年の目標達成は見通せず」(2023/07/31)
- NHK: 「物価高と円安でグローバル留学がピンチ▼埼玉県警で男性の育休増加▼その理由と効果は」(2022/08/15)
- 日経新聞: 「鳥取県、男性の育休取得率85%へ 県庁で促進イベント」(2024/06/18)
- 日時: 2023年から2024年にかけて
- 育休に関する制度の変更・改革
- 共通テーマ: 育休給付金の引き上げや新制度の導入
- ソース:
- テレ東(WBS): 「育休給付 実質10割に引き上げへ 厚労省案 両親14日以上の育休が条件」(2023/11/13)
- 日経新聞: 「改正子ども・子育て支援法」(2024/06/13)
- 日時: 2023年から2024年にかけて
- 育休と仕事の両立
- 共通テーマ: 育休取得後の復帰と仕事の両立、時短勤務
- ソース:
- テレ東(WBS): 「捜査と子育て…刑事の働き方改革」(2024/03/13)
- アベマニュース: 「"子育て&仕事"両立ムリ?時短勤務の職探しに壁…2児の母『100社以上も書類落ち』雇う側の本音『中小企業は雇用したくてもできない』」(2023/06/15)
- 日時: 2023年から2024年にかけて
メディアに訴求する際のポイントのまとめ:
- 男性の育休取得促進: 男性の育休取得率が過去最高を記録するなど、社会全体で男性の育休取得を推進する動きが強まっています。このトレンドを背景に、育休取得を促進するための具体的な施策や成功事例を紹介することで、企業の先進的な取り組みを強調できます。
- 育休制度の改革: 育休給付金の引き上げや新制度の導入により、育休取得が経済的にも現実的になりつつあります。これにより、企業がどのように対応し、従業員の福利厚生を充実させているかをアピールすることが重要です。
- 育休と仕事の両立支援: 育休取得後の職場復帰や時短勤務のサポートが求められています。企業がどのように柔軟な働き方を実現し、育休取得者がスムーズに職場復帰できる環境を整えているかを具体的な事例とともに紹介することが効果的です。
これらのポイントを基に、企業が育休制度の利用を推進し、働きやすい環境を整えていることを強調することで、企業価値の向上に繋げることができます。
調整前の出来栄えとしてはまずまずでしょうか。
ここから独自のRAGを組み合わせたり、LLMの出力調整などを行えば、かなり力強い広報コンサルタントが出来上がるのではないでしょうか。
以上、Difyを活用したニュースリサーチ手法の解説でした。
当社ではDifyなどを活用したLLMシステム作成などもサポートしていますので、お気軽にお問い合わせください。
▼合わせて読みたい