
AIを使ってメディアリストを爆速で作り上げる方法
メディアリスト作成、何時間かかっていますか?
広報担当者にとって、プレスリリースの配信先選定は避けて通れない業務です。
PR TIMESには数千を超えるメディアが登録されています。この中から、自社のプレスリリースに最適な300媒体を選び出す。業種を絞り、地域を考慮し、メディアの種別バランスを取りながら、一つひとつチェックを入れていく――この作業に、どれくらいの時間を費やしているでしょうか。
経験豊富な広報担当者でも、1回のリスト作成に1〜2時間はかかるのが実情です。しかも、プレスリリースの内容が変われば、選定基準も変わる。毎回ゼロから選び直す必要があります。
私たちはこの課題を、Claude Codeの「スキル」機能を使って解決しました。プレスリリースの内容を渡すだけで、AIが最適なメディアを選定し、PR TIMESへの登録まで全自動で完了する。所要時間はわずか約10分です。
本記事では、この自動化の仕組みと実際の成果を詳しくご紹介します。
Claude Codeの「スキル」とは
Claude Codeには、特定の業務フローを再現可能な形でパッケージ化できる「スキル」という機能があります。
通常のAIチャットでは、毎回同じ指示を入力し直す必要があります。しかしスキルを使えば、手順がすべて事前に定義済みです。ユーザーは「メディアリストを作って」と指示するだけ。あとはClaude Codeが必要な確認事項だけを質問し、残りはすべて自動で実行します。
スキルファイルの実体は、マークダウン形式のテキストファイルです。AIへの指示書であると同時に、業務手順のドキュメントでもあります。つまり、スキルを作ること自体が業務のナレッジ化になるのです。
自動化の全体像:4つのフェーズ

このスキルは、4つのフェーズで構成されています。
フェーズ1:全メディア情報の取得
まず、PR TIMESに登録されている全メディアの情報を取得します。
各メディアには、媒体名、運営会社、メディア種別(テレビ・新聞・Web等)、対応業種、対応地域、配信方法(メール/FAX)といった豊富な属性データが含まれています。このデータが、次のAI選定の判断材料になります。
フェーズ2:AIによるメディア選定
ここがこのスキルの核心部分です。取得した全メディアデータとプレスリリースの内容を、Claude Codeが分析して最適な300件を選定します。
選定の基準は以下の通りです。
業種マッチング
プレスリリースの内容から関連業種を特定し、各メディアの対応業種との一致度をスコアリングします。例えば、「採用トラブル実態調査」というプレスリリースなら、「経営・ビジネス」「IT・情報通信」「教育」といった業種のメディアが高スコアになります。
メディア種別バランス
Web媒体だけに偏らないよう、テレビ・新聞・雑誌・Web・ラジオ・通信社をバランスよく配分します。通信社(共同通信、時事通信等)は原則すべて含めます。
地域マッチング
全国ニュースなのか、特定地域に関連するのかを判断し、地域メディアの配分を調整します。
メディアの概要との関連性
各メディアの説明文とプレスリリースの内容をマッチングし、より関連性の高いメディアを優先します。
この多角的なスコアリングにより、人間が「なんとなく」で選ぶよりも網羅性の高いリストが完成します。
フェーズ3:PR TIMESへの自動登録
選定したメディアを、PR TIMESのメディアリストに実際に登録します。
Claude Codeがブラウザを操作し、プレスリストを作り上げます。ここではサイトUIの技術設計に合わせて、検索して選択するという動作が必要となります。
フェーズ4:保存と完了
最後に、メディアリストを保存します。リスト名は日時+識別子で自動命名されるため、いつ作成したリストかが一目で分かります。
実際のテスト結果
このスキルを、実際のプレスリリースでテストしました。
操作手順:
- Claude Codeでスキルを発動させる
- プレスリリースの内容を貼り付け
- あとは待つだけ
結果:
項目 | 結果 |
|---|---|
登録件数 | 300件(上限ぴったり) |
内訳 | メール 233件 + FAX 67件 |
所要時間 | 約10分 |
手動で行えば1〜2時間かかる作業が、約10分で完了しました。しかも、AIがプレスリリースの内容を分析した上での選定なので、業種やメディア種別のバランスも最適化されています。
メディア選定の精度:AIは「ちゃんと」選べているのか
「自動で選ばれたメディアリスト、本当に大丈夫?」という疑問は当然あるかと思います。
実際のテスト結果を見ると、AIの選定は以下の点で手動選定と同等以上の精度を出しています。
業種の網羅性
採用関連のプレスリリースに対して、AIは以下のような業種カテゴリのメディアを選定しました。
- 直接関連: 経営・ビジネス、IT・情報通信、教育
- 間接関連: 政治・経済、健康・福祉、PR・広告・マーケティング
- 波及効果: ライフスタイル、全国紙・通信社
人間が選ぶと、つい「経営・ビジネス」に偏りがちですが、AIは「採用」というテーマから「教育」「健康・福祉」といった関連領域まで視野を広げてくれます。
メディア種別の適切な配分
テレビ、新聞、Web、雑誌、ラジオ、通信社がバランスよく配分されています。特に通信社は全社含まれており、記事配信による二次拡散も見込める構成になっています。
ここで差がつく!AI自動化【3つのポイント】

今回の開発を通じて、私たちが重要だと考える3つの技術的ポイントを紹介します。
1. PlaywrightではなくCDPを使う
ブラウザ自動化といえばPlaywright(プレイライト)が定番ですが、今回のケースではCDP(Chrome DevTools Protocol) を採用しました。
CDPは、Chromeブラウザの内部プロトコルに直接アクセスする技術です。Playwrightが「人間の操作を再現する」アプローチなのに対し、CDPは「ブラウザの内部APIを直接叩く」アプローチ。これにより、ログイン後のセッションCookieを使った内部API呼び出しや、画面上では見えないデータの取得が可能になります。
Playwrightはとにかく操作が重い&遅いですし、使用トークン量も膨大で使いづらいです。
今話題のOpen Clawがブラウザ操作が得意と言われるワケも、このCDPを利用しているからと言われています。
今回のケースでは、PR TIMESの内部APIで全メディアデータを取得する部分にCDPが不可欠でした。画面上の操作だけでは数千件のメディア情報を一括で取得することはできません。
2. 操作先のシステムを、AIにしっかり理解させる
AIにブラウザ操作を任せるうえで最も重要なのは、操作先のWebアプリケーションの仕組みをAIに正確に教えることです。
PR TIMESのメディアリスト画面には、AIが知らなければ対応できない「クセ」がいくつもあります。
- Reactアプリ特有の入力方式: 通常のDOM操作では検索が動かず、Reactの内部状態を更新する特殊な方法が必要
- 仮想スクロール: 画面上には常に10件程度しか表示されず、スクロールでは全件にアクセスできない
- 複数の「保存」ボタン: 画面上に保存ボタンが複数あり、位置(Y座標)で正しいボタンを判定する必要がある
- モーダルの出現パターン: 送信元設定、FAX確認など、操作中に出現するポップアップの種類と対処法
これらをスキルファイルにすべて記述しておくことで、AIは「画面をどう操作すべきか」を正確に理解した状態で実行に移れます。漠然と「メディアリストを作って」と指示するのではなく、対象システムの技術仕様レベルまでAIに教える。これが安定した自動化の鍵です。
3. すべての業務を「フロー」で考える
AI時代の重要なのは、業務をすべてAIが実行可能なフロー(スキル) として再設計する考え方です。
メディアリスト作成を例にすると、従来は「担当者がPR TIMESを開いて、なんとなく選ぶ」という属人的な作業でした。これを「データ取得→AI選定→自動登録→保存」という4フェーズのフローに分解し、各フェーズの入出力・判断基準・制約条件を明文化する。
このフロー化が済めば、あとはAIが繰り返し実行できます。スキルファイルは、業務マニュアルであると同時に、AIの実行プログラムでもあるのです。
この考え方は、メディアリストに限りません。プレスリリースの評価、調査データの分析、月次レポートの作成——あらゆる広報業務を「AIが実行可能なフロー」として捉え直すことで、組織全体の生産性が根本から変わります。
Claude Codeのスキル機能:広報業務への応用可能性
今回はメディアリスト作成を自動化しましたが、同じスキル機能を使えば、広報業務のさまざまな場面で自動化が可能です。
- プレスリリースの多視点レビュー: 経済記者、技術記者、社会部記者など、複数の記者視点で原稿を同時チェック
- メディアモニタリングレポート: 月次の露出分析を自動集計・レポート化
- SEO分析と原稿最適化: 検索キーワードの調査から原稿への反映まで
- 調査データの分析: アンケート結果のクロス集計からインサイト発見まで
いずれも「スキルファイル」として一度定義すれば、コマンド一つで繰り返し実行できます。
まとめ:広報業務の「作業」をAIに任せる時代

メディアリスト作成は、広報業務の中でも特に「時間がかかるのに、付加価値を生みにくい」作業です。数千件のメディアを眺めてチェックを入れる作業に、広報担当者の戦略的思考は必要ありません。
Claude Codeのスキル機能を使えば、こうした定型業務を「コマンド一つ」で完結させることができます。生まれた時間で、記者とのリレーション構築やストーリー設計など、人間にしかできない仕事に集中する。それがAI時代の広報のあり方ではないでしょうか。
まずは一つの業務から。AIとの協働を始めてみませんか?
本記事で紹介したスキルは、当社の実際の業務で使用しているものです。Claude Codeのスキル機能は、自社の業務フローに合わせたカスタマイズが可能です。導入や構築に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。



