10代新聞購読率ほぼゼロという文春記事は本当に正しいか
2021年10月26日付けで文春オンラインで下記記事が公開されました。
この山本一郎氏の主張は本当に正しいのでしょうか。当ブログで総務省データをしばらく扱ってきましたので、この主張を元データから検証してみます。
発表数値から検証してみる
情報ソースが1年前の発表データ(調査は2年前)
まず気になるのが、山本一郎氏のデータソースとして使っている(リンクとして貼り付けている)データは、情報通信白書令和2年版(昨年発表/調査は2019年)という点です。
総務省の情報通信白書は実はややこしく、前年に「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」で取得したデータを翌年にまとめて発表、情報通信白書に利用しており、データに1年もラグがあるのが特徴です(e-statにもまとめられておらず、集計前のローデータは入手不可…)。
今回記事で触れられていた「10代の新聞接触がついに0%」というのは、この恐らく2020年発表(2019年調査)の10代・休日のデータ(0.1分)を見ての判断かと思われます。
2019年の休日限定のデータである
実際の最新数値は2019年の1日0.1分から2020年(2021年現時点での最新データ)では0.9分に上昇しています。
実際の新聞の閲読分数調査結果を比較
実際の総務省発表のデータをまとめたのが下記グラフ(10代は黄色)です。
このグラフを見ると、2020年は逆に若干ですが上昇していることが分かります。
最新調査では10代の新聞閲覧分数及び閲読率は
平日1.4分/閲読率2.5%
休日0.9分/閲読率1.4%
となっています。
ちなみに10代のn数は284名。95%信頼区間は上下1.4%ほどなので、多くても全体の3%未満という低い結果は変わらないかとは思います。
結論
- 10代新聞閲読率が0に近づいたのは昨年発表(2019年調査)のデータで若干ミスリード
- 2020年調査(2021年発表・平日)では0.3分から1.4分に逆に増えている
- 2020年調査(2021年発表・休日)でも例年平均値に近い0.9分に戻っている
メディアの記事もデータまでは検証しないでしょうから、そのまま信じてしまうといつかえらい目に合うかもしれません。
ちなみに総務省のメディア接触データはe-statにも上がっておらず、扱いずらく集計作業もとても手間です。また、信頼区間なども考慮されていないため、たまたま誤差が出たという可能性も大いに考えられ、データを読み取るリテラシーがますます重要になってきていると言えるでしょう。
以上、情報通信白書のベースとなっている「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の検証結果でした。
※調査結果のまとめはページ下部にもまとめています。
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